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今週のヘッドライン: 2022年05月 2週号

収量と品質追求の輪作体系 水田生かす家族経営 ―― ミズキファーム(株)(富山県砺波市)(1面)【2022年5月2週号】

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 「米価は下落基調だが、水稲を基幹とし、大麦と大豆、ソバとの輪作に取り組み、収量と品質で勝負したい」と話すのは、富山県砺波市苗加で38ヘクタールの水田営農を展開するミズキファーム株式会社の水木修さん(63)。息子で代表を務める章善さん(31)など家族4人で、水稲と大麦、大豆、ソバのブロックローテーションを行っている。中心に据える六条大麦は2021年産は10ヘクタール栽培し、徹底した排水対策などで、10アール当たり収量396キロと、県平均比156%の収量を達成。輪作を意識した水稲の品種選定で、湿害の防止や作業の効率化につなげている。

(1面)

〈写真:大麦圃場で排水溝を説明する水木章善代表。排水口に向けて、圃場全体に勾配をつけている〉

高まる新たな病害虫の侵入リスク 早期発見・防除を(2面・総合)【2022年5月2週号】

 近年、地球温暖化による気候変動などを背景に、病害虫の発生地域が拡大している。新たな病害虫が侵入するリスクも高まっており、国内ではサツマイモ基腐病やツマジロクサヨトウ、トマトキバガなどの対策が課題となっている。農業の環境負荷低減を推進する「みどりの食料システム戦略」新法の関連法としてこのほど可決、成立した「改正植物防疫法」では、侵入調査の実施と緊急防除の迅速化などの対応を強化するとともに、発生予防を含めた総合的防除に関する国と都道府県の役割を規定した。都道府県などが提供する発生予察情報に注意し、病害虫の侵入やまん延防止を徹底したい。

(2面・総合)

職場の環境・知識を点検 性別問わず働きやすく ―― (株)マイファームの浪越隆雅専務が紹介(3面・ビジネス)【2022年5月2週号】

 人権意識の高まりや持続可能な社会の実現に向け、社会全体でジェンダー(社会的・文化的性差)平等や多様な性の尊重が重視されてきている。農業現場でも、性別などにかかわらず働きやすい環境づくりや、経営者・従業員の知識の点検が求められ、経営向上にもつながる。京都市に本社を置く農業ベンチャーの株式会社マイファームは『これからの農業経営のためのハンドブック―女性とはたらく―』を作成。女性を含む多様な人々が一緒に働くための改善のヒントをまとめた。ポイントを、浪越隆雅専務取締役に紹介してもらう。

(3面・ビジネス)

みんなで楽しく栽培体験 鉢植え大豆 ―― 篤農家・福士武造さんに聞く(青森市)(5面・すまいる)【2022年5月2週号】

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 青森市浪岡で水稲・大豆の篤農家として知られる福士武造さん(85)は、大豆づくりを家庭などでも体験してほしいと、鉢植え栽培を実践し、食育として地元小学生に教えている。増収や水やりの省力化の工夫として、自身が水田営農の中で開発した「地下かんがい法」を応用。1株からエダマメ677グラム(523粒、278さや)を収穫した例もあり、「土中環境を整えれば、プロ農家も驚くような大豆本来のちからを引き出せる」と話す。

(5面・すまいる)

〈写真上:福士武造さん〉
〈写真下:土寄せ後の大豆株〉

荒廃農地を再生 雑木除去して放牧地に 農研機構西日本農業研究センターなどが3機種実演(7面・営農技術・資材)【2022年5月2週号】

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 農研機構西日本農業研究センターなどは先ごろ、島根県大田市で「荒廃農地を放牧地に再生するための現地シンポジウム」を開催。雑木が繁茂し、再生が困難なケースが多い荒廃農地でも有効な造成法として、マルチャー(トラクター装着式フレールモアー)による雑木と地表の高速処理など3機種を実演した。家畜の行動を制限する雑木の処理とともに、比較的短時間で草地化が可能になる。放牧による農地の持続的利用に向け、農機の特徴や作業性などを紹介し、情報交換した。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:トラクターに接続したマルチャー。バックしながら雑木を粉砕する〉

2022年産大豆播種前入札 価格・落札率とも最高 日本特産農産物協会が発表(2面・総合)【2022年5月2週号】

 日本特産農産物協会は4月28日、2022年産大豆に係る播種前入札取引の結果を公表した。平均落札価格は前年産播種前価格比400円(4.1%)高の60キロ当たり1万57円となり、播種前入札の本格実施(18年産)以降、最高を更新した。輸入大豆の高騰などで国産需要は高まる傾向にあり、21年産収穫後入札の4月の平均落札価格に比べても361円(3.7%)高い値を付けた。

(2面・総合)

水稲共済全相殺方式 手厚い補償に安心【5月2週号 秋田県】

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 【秋田支局】白色申告全相殺方式9割補償に加入した大仙市板見内地区の原孝之さん(58)は、水稲5.6ヘクタールを作付けている。昨年産まで一筆方式の7割補償を選択していたが、2020年、長雨の影響でいもち病がまん延し、収穫量が大きく減少した。「これまで防除や肥培管理を徹底して、被害の未然防止に努めてきた。それでも防ぎ切れない被害に直面して、7割補償では十分な補てんにはならないと感じた」と原さん。一筆方式が廃止となることもあり、万が一に備えて補償割合の高い方式への加入を検討していた。今年、水稲共済加入申込書に同封されていたチラシを見て、白色申告全相殺方式が新設されることを知った。「白色申告をしていたため興味を持ち、NOSAIの担当職員に相談した。補償内容や評価方法などを他の加入方式と比較し、掛金を試算してもらった結果、全相殺方式9割補償に加入を決めた」。白色申告全相殺方式は、収穫量が分かる客観的な資料があれば加入できる。「資料に基づいて過去の実績を設定でき、評価はその年の実績を見て比較するため明確で良い。9割の高い補償を受けることができるのも魅力的」。原さんは一筆半損特約を付加した。全体の減収が少ない場合でも、一筆方式と同様に圃場ごとの被害があれば補償の対象だ。「現在の作付面積を維持しつつ、質の高い米作りを継続したい。そのために安定した経営が必要なので、白色申告全相殺方式は自分にとってベストな選択だと思う」

〈写真:「経営安定のために自分に合った選択ができた」と原さん〉

経費削減、土壌改良、増収 バイオ炭の効果発揮【5月2週号 山形県】

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 【山形支局】水稲65ヘクタールを柱に、大豆や野菜を栽培する有限会社米の里(鶴岡市藤島、代表=齋藤弘之さん・43歳)は、自家製のもみ殻くん炭を農地の全面積に施用し、増収と二酸化炭素(CO2)の削減に励んでいる。これは2021年に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」で掲げるバイオ炭の農地施用の取り組みの一環だ。植物は光合成によって大気中のCO2を吸収し成長する。しかし、分解されて土に返るときに吸収した量と同量が大気中に排出されるため、CO2の削減にはつながらない。バイオ炭は木や竹、もみ殻、剪定枝などが炭化したもので、分解されにくい特性を持つ。農地に施用することで土壌改良や水質浄化のほか、CO2吸収効果で地球温暖化防止にもつながるという。同社では以前、ケイ素やカルシウム、石灰を圃場に散布していたが、毎年発生する大量のもみ殻の処分や肥料代の削減、土壌改良を図るため、3年前に取り組みを始めた。もみ殻くん炭を施用する際、製造するには手間がかかり、購入する場合はコストがかかる。同社は全自動もみ殻くん炭製造機を購入することでその問題を解決した。製造機を通年で稼働し、機械で細かく裁断したもみ殻くん炭を春と秋に分け、10アール当たり500リットルを圃場に散布する。「機械の購入費用はかかったが、メリットは大きい。微生物が活発に働いて、根張りが良くなり、収量は約10%アップした」と齋藤さん。20年にはCO2排出削減などの取り組みを政府が承認する「J―クレジット制度」の対象にバイオ炭の農地施用が加えられた。庄内地域では今年2月に「庄内バイオ炭環境保全協議会」が発足し、6月からは農地への炭素貯留量に応じて企業から収入を得られるようになる。同社は同協議会の会員となり、地球温暖化防止と収入増をさらに図る考えだ。近年は環境保全に関心を持つ消費者が増えつつあることから、農業を通じたCO2削減を付加価値にした商品の販売を視野に入れている。齋藤さんは「米価の下落や資材・肥料などの高騰は今後も続くと予想される。身近にあるものを使って、低コストかつ環境に配慮した農業で、持続的発展を目指したい」と話す。

〈写真:「米作りを通して地球温暖化を防止していきたい」と齋藤さん〉

育苗ハウスでブドウ栽培 剪定・収穫を効率的に【5月2週号 福井県】

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 【福井支局】越前市中新庄町〈なかしんじょうちょう〉の中新庄町集落営農組合の中條正一〈なかじょうしょういち〉さん(68)、北山善左ヱ門〈きたやま・ぜんざえもん〉さん(67)、中條與志一〈よしかず〉さん(65)の3人は、2016年にビニールハウス1棟を新設し、効率的なブドウ栽培に取り組んでいる。栽培する品種は「サニールージュ」と「藤稔〈ふじみのり〉」を各7本。ハウス内側面の片側に植樹し、ブドウ棚を約1.8メートルの高さに設置。棚の下側に誘引し、実が収穫しやすい位置にくるよう剪定している。ハウス中央を広く使えるようにしたことで、剪定や収穫作業が効率化し、4月には育苗ハウスとしても利用が可能だ。さらに、殺虫殺菌剤を使わず農薬を低減した栽培のため、「人力で毎年作業するスズメガなどの害虫駆除が大変」と正一さんは話す。7月下旬から赤い果実で香りが良いサニールージュ、8月上旬からは粒が大きく果肉がしっかりした食べ応えのある藤稔の収穫が始まる。1房35粒、500グラム、糖度17度以上で収穫し、地元の青果市場に出荷するほか組合員に販売。「ゆくゆくは『シャインマスカット』などにも挑戦したい」と3人は意気込む。

〈写真:「甘くておいしいと好評で、毎年楽しみにしている常連もいる」と話す正一さん(左)、與志一さん(中央)、北山さん〉

かんきつ栽培+パーラー経営 瀬戸内各地の農家と連携【5月2週号 広島県】

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 【広島支局】尾道市の向島にある「しまなみファーム合同会社」の代表社員・村上幸志〈こうし〉さん(54)は、瀬戸内各地から果物を仕入れ、「尾道観音山フルーツパーラー」を経営。作物の生産だけではなく、消費者のニーズを考えた販売にも力を入れる。パーラーは昨年12月、和歌山県を拠点に全国展開する観音山フルーツパーラーのフランチャイズ店としてオープン。かんきつを栽培する村上さんは「農家同士で連携し、しまなみの農業を盛り上げたい」と、果物を仕入れるため生産者と自ら交渉した。旬の果物を使ったフルーツパフェなどを提供するほか、併設するマルシェで生果や加工品を販売する。地元の向島で農業を始める際、売る場所から確保したという村上さん。「パーラーは販売所としての機能がある。売れる作物を作ることが大事」と話す。より多くの人に知ってもらうため、写真共有アプリ「インスタグラム」などのSNS(交流サイト)で積極的に情報を発信する。「SNSやメディアを見て来てくれる人の中には、島根や伊勢、神戸など県外のお客さんも多い」と、1日140人ほどが来店することもある。「向島まで来て良かったと思ってもらいたい。『おいしかった』という声は励みになる」。3月下旬にレモンを200本定植した村上さんは「収穫できるようになったら、うちのレモンもパフェに使いたい」と話す。

〈写真:「これからは『ジャバラ』『石地』『ゆら早生』に力を入れたい」と村上さん〉

加工施設オープン ジビエ利用促進、獣害低減へ【5月2週号 福岡県】

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 【福岡支局】うきは市の株式会社ルーラルプライドは今年4月、鳥獣食肉解体加工施設「うきは自然のジビエ肉ウキナナ」を開設した。代表を務める國武淳一さん(39)は「獣害に困っている地元の人に、ウキナナをぜひ利用してほしいですね」と話す。國武さんは5年ほど前に狩猟免許を取得し、イノシシ被害に頭を悩ませていた友人と捕獲を体験。その際、捕獲後の鳥獣の処分や、自家消費のための獣肉の解体に多くの工程と時間がかかることを痛感した。施設では地元や近隣自治体で捕獲した鳥獣を回収・買い取り、加工処理する。主に外食産業などへ卸すほか、一般消費者向けのジビエ(野生鳥獣肉)も販売。ハーブや野菜、果物など厳選した旬の農作物も提供する。自然からいただいた大切な「いのち」を提供することで、いのちをつなぎ、人と動物が共存できる環境を守っていきたいという思いを施設の設立に込めたという。「猟師の高齢化が進む中、若い人にも狩猟免許の取得が増え、ウキナナを利用してもらうことで山間地の獣害の低減に貢献できればうれしいです」。國武さんは「ジビエをきっかけに、田舎と都会で『人と人』『人とモノ』の新しいつながりや循環を生みだしていきたいです」と話している。

〈写真:前職の飲食業での経験を生かし、「田舎と都会の架け橋になりたい」と國武さん〉

防風林「学校給食は有効な食育の場【2022年5月2週号】」

 ▼輸入穀物や食用油など食材の高騰が相次ぎ、限られた予算で提供される学校給食の実施が困難になっているという。すでに値上げに踏み切った自治体もあり、家計負担の増加が心配される。
 ▼文部科学省は、都道府県などに新型コロナ対策の臨時交付金が活用可能と事務連絡を出したそうだ。ひとり親家庭を中心に貧困率が上昇しているとの報道もある。家計へのしわ寄せなく、給食の提供継続を望む。
 ▼学校給食は、栄養バランスのとれた食事の提供による子どもの健康維持と増進だけでなく、米飯を基本とした日本型食生活を学び、地場産の食材を知る機会でもある。生産者との交流機会を設ける学校もあり、農業への関心喚起などの効果も期待できる。
 ▼包丁や炊飯器を持たない家庭も増えつつあるといわれる昨今、家庭任せでは食の知識習得や健全な食生活の実践を促す「食育」の充実は難しい。学校給食なら子どもたちに直接働きかけられる。

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