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今週のヘッドライン: 2022年04月 4週号

パイプハウス 自力施工 安く、強く 被災時の廃材で補強 台風対策に ―― 小山昌弘さん・真史さん(千葉県八街市)(1面)【2022年4月4週号】

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 台風被害が頻発する中、千葉県では早期の営農再開にパイプハウスの自力施工を勧めている。八街市で施設野菜50アールなどを栽培する小山昌弘さん(61)・真史さん(33)親子は、台風で被災したパイプハウスを自力で復旧して、経費を従来の約3割削減し、早期に作付けを再開できた。さらに、廃材を再利用して補強部材を増やし、被害防止対策を強化する。真史さんは「業者が少ない中、資材さえあれば直せるのが利点。余ったパイプの有効活用など自分なりの工夫も思い浮かぶ」と話す。

(1面)

〈写真:「一度変形したパイプも補強などには十分使える」と追加したダブルアーチを指す真史さん〉

農水省 農業分野の地球温暖化緩和策で初調査 労力や経費など課題に(2面・総合)【2022年4月4週号】

 農林水産省は20日、農業分野の地球温暖化緩和策に関する意識・意向調査の結果を公表した。水田から発生するメタン削減に効果がある中干し期間の延長は、水稲を栽培する農業者の25.9%が、秋に稲わらをすき込む秋耕は同59.5%が「既に取り組んでいる」と回答した。その一方で、農地で温室効果ガスの排出・吸収が起きていることを「知らなかった」農業者は64.5%を占め、温暖化と農業の関係が十分認知されていないことも分かった。政府が進める「みどりの食料システム戦略」では、農業生産からの温室効果ガス排出量を削減する技術の普及が課題となる。温暖化対策の意義や必要性について国民的な理解を広げ、生産現場の取り組みを後押ししていくことが大切だ。

(2面・総合)

被害の未然防止・軽減へ 損防事業を積極支援 ―― NOSAI山梨の共済部長(NOSAI部長)(山梨県)(3面・NOSAI部長)【2022年4月4週号】

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 NOSAI山梨(山梨県農業共済組合)では、NOSAIが行う損害防止事業を共済部長(NOSAI部長)がサポートし、被害の未然防止・軽減に力を注ぐ。台風や豪雨などに加え、高温障害や獣害、病虫害などのリスクも増大する中、「NOSAIの重要性は、ますます高まっている」と口をそろえる共済部長2人に話を聞いた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真:NOSAI職員とのコミュニケーションを重視する富士川町最勝寺の功刀(くぬぎ)千秋さん(右)〉
〈写真:「NOSAIの無人ヘリ防除には助かっている」と話す都留市法能の小俣正孝さん(右)〉

米ぬかパンなど自社産米で加工品8種 採算の取れる稲作に 常温保存可能で販売しやすく ―― (株)高村農園(山口県岩国市)(4面・流通)【2022年4月4週号】

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 「米農家では採算が取れないともいわれるが、加工で付加価値を付けて収入を伸ばせている」と話すのは、山口県岩国市周東町で水稲8.2ヘクタールを栽培する株式会社高村農園の作田妙江代表(48)。米ぬかを使ったパンの一種・米ぬかカンパーニュなど常温で保存できる商品を中心に、8種の米加工品を製造・販売し、3年間で1.4倍に収入を伸ばす。商談会に積極的に出席して販路を広げ、塩米こうじなどは米国への輸出にも取り組む予定だ。

(4面・流通)

〈写真:塩米こうじをパック詰めする作田妙江代表〉

酪農 牛群検定のススメ 健康状態を早期に把握 成績表はウェブ上で確認(7面・営農技術・資材)【2022年4月4週号】

 原油や配合飼料価格の高騰、急速な円安の進行に加えて、生乳の需給緩和など酪農経営は厳しさを増している。さらにこれから夏季を迎えると、乳量や乳質の低下を招きやすい。毎月の乳用牛群検定(牛群検定)成績は個々の牛の健康状態を把握でき、経営改善に役立つ。検定成績表の見方のポイントを紹介する。

(7面・営農技術・資材)

毎日お茶のある暮らし 農水省がキャンペーン(2面・総合)【2022年4月4週号】

 農林水産省は15日、新茶シーズンの本格化に合わせて「毎日お茶のある暮らしキャンペーン」を始めると発表した。茶専門店やレストランなど賛同事業者から、日本茶への応援メッセージや機能性成分など魅力を紹介した記事・動画を募集。同省ホームページ(HP)やSNS(交流サイト)などで広く発信し、消費拡大につなげる。

(2面・総合)

今年も警戒! 熱中症 ―― 農業現場で参考になる取り組みを紹介(5面・すまいる)【2022年4月4週号】

 政府は13日、熱中症対策行動計画を改定し、2022年夏の目標として、「熱中症警戒アラート」などに基づく適切な予防行動の定着を掲げた。環境省と気象庁は、熱中症の危険性が極めて高いと予測した際に国民に予防行動を促す熱中症警戒アラートの運用を27日から始める。近年は、熱中症による救急搬送者数や死亡者数が高水準で推移。農作業中の死亡事故も19年までの10年間で251件に上る。農業現場で参考になる取り組みを紹介する。

(5面・すまいる)

技術改善で繁殖・肥育の生産性向上【4月4週号 長崎県】

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 【長崎支局】「新しい技術を積極的に取り入れ、これからの畜産を盛り上げていきたい」と話す南島原市加津佐町の綾部寿雄さん(69)。代表理事を務める農事組合法人花房牧場で、地域の人と協力しながら繁殖牛100頭、肥育牛148頭を飼育する。オリジナルの餌を製造するなど、生産性向上へさまざまな取り組みを実践中だ。同法人では、25年ほど前から自家配合飼料に豆腐かすを合わせて与える。綾部さんは「長崎県畜産試験場(現・長崎県農林技術開発センター畜産研究部門)で豆腐かすを使って餌を与えていたのを見て、繁殖牛でも代用できないかと着目したのがきっかけ」と話す。「豆腐かすは産業廃棄物として出されており、環境にもいいと考えた。地元の豆腐店から出される豆腐かすを活用し、今までと変わらない間隔で分娩ができている」。現在、飼料が高騰する中で、周りの力になればという思いから、取りに来てもらえる人に限定して販売するという。県平均より分娩間隔が長いという課題解決のため、さまざまな工夫を施した。「分娩監視・発情発見システム『モバイル牛温恵』を導入するほか、餌に青草も使用することで受胎率を向上させている」。イタリアンライグラスやソルガムなどを約2ヘクタールで栽培し、餌が一年中切れないように心がけている。「分娩間隔の短縮だけでなく、その後の事故を低減させなければ意味がない」と綾部さん。分娩後の事故を減らすため、与えるミルクの濃度や温度を調整できる「ミルメーカー」を導入する予定だ。子牛に合ったミルクを従業員でも作ることができ、体調を見ながら細かな調整ができるところに魅力を感じるという。綾部さんは、所属する大雲仙和牛部会で「牛の110番」制度を作り、分娩の手伝いや餌の与え方などの相談に乗るなど、地域の畜産経営者のためにも力を注ぐ。「今後は野菜農家と協力する必要がある。振興局に協力を仰ぎ、化学肥料を使わず、牛や鶏・豚の排せつ物を利用して野菜を栽培できるか研究している。循環型サイクルをつくり、環境に配慮した飼育方法を模索していきたい」と話す。

〈写真:豆腐かす入りの配合飼料を袋詰めする綾部さん(左)と従業員〉

ハウス土耕イチゴ 細心の管理で着実に増収【4月4週号 岐阜県】

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 【岐阜支局】「お客さんに『おいしかったで。また買うわ』と言ってもらえたときがうれしいです」と話すのは、関市東田原の寺下三紀さん(32)。夫の光さん(32)と10年ほど前から二人三脚でハウスイチゴ20アールを栽培する。三紀さんの実家は水稲農家で、もともと農業に関心があり、県農業大学校でイチゴを学んだことがきっかけとなり、研修期間を経て就農した。光さんは三紀さんと同じ農業大学校でトマトを学んでいたが、イチゴ栽培のやりがいに引かれて一から勉強。三紀さんと共に就農した。イチゴは3月から9月に育苗、11月下旬から5月ごろにかけて収穫する。「自然が相手なので、そのときの気候に合わせて肥料や水、温度の管理など大変なことが多いです。日頃の管理の積み重ねで、収量が増えてくるのが実感できたときがうれしいですね」と三紀さん。土耕栽培に取り組む三紀さんは「最近は高設栽培が多いが、ハウス土耕は環境の影響を受けにくく、株が丈夫で安定しています」と話す。土壌診断をベースに足りない成分を補い、土壌消毒や肥料による発酵など、イチゴの生育に最適な環境をつくり上げる。日々の勉強と経験を重ねた結果、就農した頃に比べ最近の収量は1.5倍ほどに増えた。光さんは「高級路線が求められることはありますが、気軽にたくさんの人に味わってもらえる果実を作りたいです」と話す。初詣で「イチゴがたくさん取れますように」と願った三紀さん。「(光さんには)健康に気を付けてもらい、末永く二人でやっていきたい」とはにかむ。

〈写真:取れたてのイチゴを手に笑顔の三紀さん〉

会津の魅力 茶でアピール【4月4週号 福島県】

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 【福島支局】会津若松市の株式会社One's home(ワンズホーム=従業員9人)では、会津の特産品を使用した茶を製造・販売。同社を経営する西本真理子〈にしもと・まりこ〉さん(37)は、商品を通して会津の魅力を広めつつ、「三方よし」が築けるよう日々奮闘している。市内でカフェを営んでいた西本さんは、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、茶の商品開発に乗り出した。「自分だけがもうかれば良いということではない。三方よしを信念に、商品を通して、会津と農家さん、お客さま、みんなが幸せになるようにしていきたい」と話す。以前からの構想「会津の特産品を広めたい」の実現に向け、2020年5月に茶の製造を始め、4カ月後には販売を開始した。会津の特産「おたねにんじん」や「身不知〈みしらず〉柿」の葉、規格外のリンゴを仕入れ、「会津おたね人参ハーブティー」「会津柿の葉と黒豆のハトムギ茶」「会津りんごと国産レモンのハーブティー」を、インターネットや道の駅などで販売する。リンゴの仕入れ先の白井農園代表・白井康大〈しらい・やすひろ〉さん(39)は「会津のためにと奮闘し、栽培したリンゴを無駄なく、おいしく加工していただき感謝している。お互いこれからも良いものを作っていきましょう」とエールを送る。「6次化商品は、完成してゴールではなく、本当のスタートだと思っています。商品を世に出して気付くことも多いです」と西本さん。得意客や従業員の意見を聞き、現在も商品改良を重ねている。地球環境にも関心を持つようになった。「環境に配慮することを子どもに教えるためには、まずは自分から」と、環境と体に気を配った商品を意識している。ティーバッグは石油由来のプラスチックではなく、トウモロコシ繊維のものを使用。パッケージは再生可能紙にした。柿の葉や規格外のリンゴを使い食品ロスに取り組み、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の実現に励む。西本さんは、東日本大震災に伴う原発事故の影響で大熊町から会津若松市に移り住んだ。将来は、大熊町の活性化にも尽力したいという。

〈写真:「会津土産として購入してくれる方が増え、とてもうれしい」と西本さん〉

自家野菜をマカロンに 6次化で売り上げ伸ばす【4月4週号 岡山県】

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 【岡山支局】「経営規模の拡大ではなく、規格外品の活用で売り上げを伸ばすため6次化を決めた」と話すのは、瀬戸内市の株式会社いぶき代表取締役の梶岡洋佑〈かじおか・ようすけ〉さん(29)。大学在学中の2013年に起業し、約3.5ヘクタールの規模で年間40種類以上の作物を栽培する。6次産業化に当たっては「野菜スイーツ」の生産を検討。一般的な野菜使用のスイーツと差別化を図るため、材料はアレルゲンフリーにすることを決めた。「パティシエの知人に詳細を言わず相談したとき、味と色みに野菜が使え、多品目栽培を生かせるマカロンを勧められた。通常は卵白を使うスイーツと知らずに決めたが、知っていたらマカロンは作らなかったと思う」。特定原材料を使わず、卵白の代用として大豆の煮汁を使う。メレンゲに比べ気泡が割れやすく、何度も失敗を重ねながら製品化し、現在は主にオンラインで販売する。21年は岡山県商工会連合会の「晴れのめぐみ岡山ブランド」でベストセレクション賞を受賞。「今後は生産数を増やし、さらなる売り上げ増加につなげたい」と意欲を見せる。

〈写真:「大量生産が今後の課題。生産環境をさらに整備したい」と梶岡さん〉

防風林「飢餓拡大の回避に主要国は連携を【2022年4月4週号】」

 ▼生まれ育った集落に「けかじ坂」と呼ばれる坂がある。城下を出て集落に入る位置にあり、谷を下りて上る急坂だ。天明の飢饉(ききん)の際、食べ物を求めて来た人の多くがこの坂で力尽きたとの伝承がある。坂の名は飢饉を指す方言の「けかじ」や「蹴返し」に由来すると聞く。
 ▼天明の飢饉では、冷害や悪天候に加え、藩の悪政が餓死者を増やしている。年貢減免など救荒策をせず借財返済を優先し、集めた米を大阪などで売ったのだ。餓死者を出すまいと他藩の米を買って供出した藩もある中で為政者の無責任が大惨事を招いた。
 ▼ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で穀物価格の高騰が続き、両国の小麦などを輸入する中東やアフリカなどの国に動揺が広がる。食品の価格高騰に加え、供給不安も募るためだ。国連食糧農業機関(FAO)は、栄養不足人口増加など飢餓の危機を警告し、各地から暴動のニュースも伝わる。
 ▼ロシアへの経済制裁も穀物価格高騰の一因であり、制裁に連携する主要国は飢餓の回避にも万全を期すべきだ。途上国や貧困層に犠牲を強いてはならない。

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