今週のヘッドライン: 2022年04月 1週号
水耕施設で芽ネギやチンゲンサイ、ミツバなどを生産し、障がい者22人を雇用する浜松市南区の京丸園株式会社(鈴木厚志代表、57歳)では、「人を生かすためのスマート農業」の方針を掲げ、自社内や地元メーカーとの協力で作業工程の機械化を進めている。調整や洗浄などの各作業や連絡に用いる機器など、現場のニーズに即して、作業の簡便化と均一化を進めた結果、健常者を含めた全従業員が働きやすい職場環境を実現している。
事業規模が全国一の農業共済組合が1日、北海道に誕生した。道内全てのNOSAIの組合を一つにまとめ、NOSAI北海道(北海道農業共済組合)が発足した。5月までに特定組合化する予定で、全国で46都道府県が特定組合となる。
新組合の組合員数は約2万8千人で、札幌市に本所を置く。北海道ではかつて、最大246組合等で運営していたが、組合員負担の軽減や運営基盤の強化と効率化を進め、2017年には、みなみ北海道、北海道中央、十勝、北海道ひがし、オホーツクの5組合体制となっていた。旧5組合の本所は「統括センター」として合併前の組織機能を残し、組合員に混乱が生じないようにする。
全国のNOSAI団体が取り組む全国運動「『安心の未来』拡充運動」が、2022年度で最終年度を迎える。「より広く、より深く、農家のもとへ」の行動スローガンの下で、「すべての農家に『備え』の種を届けよう」を運動目標に掲げる。役職員がこれまで以上に足を運び、農家一人一人の理解、納得を得ながら、「備えあれば憂いなし」の農業生産体制の幅広い構築を目指す。
岸田文雄首相は3月29日、ロシアによるウクライナ侵攻などの情勢から高騰している原油や原材料、食料の影響を緩和する総合緊急対策の策定を指示した。農業分野では燃油や配合飼料価格、肥料価格の上昇に加え、肥料原料の供給不安なども生じており、国内生産への影響回避が課題だ。岸田首相の下に関係閣僚会議を設置し、4月末をめどに具体策を取りまとめる。長引くコロナ禍に加え、ウクライナ情勢の先行きも不透明で、影響は長期化する可能性もある。食料生産と安定供給に支障を来さないよう緊急対策とともに中長期的な対応策を早急に検討する必要がある。
「サツマイモ基腐病が2019年から発生し、1箱しか収穫できない圃場もあった。菌は見えないので、対策をしてもどこからか入ってしまう」と話すのは、鹿児島県南九州市頴娃(えい)町の今村健造さん(68)。サツマイモ基腐病は主に梅雨期以降に発症し、つるや芋が黒く腐ってしまう病害だ。鹿児島県などで4年前ほどから発生し、県内では21年、作付面積約1万ヘクタールのうち75%の圃場で確認されている。今村さんは昨年12月、収入保険のつなぎ融資を受けて営農を継続した。
改正土地改良法が3月30日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。国や地方公共団体が豪雨対策で行う農業用水利施設の整備事業について、農業者の同意や費用負担無しで、実施できる仕組みの創設が柱。2022年4月1日に施行する。
「春の全国交通安全運動」が6日から始まる。(1)子供をはじめとする歩行者の安全確保(2)歩行者保護や飲酒運転根絶などの安全運転意識の向上(3)自転車の交通ルール順守の徹底と安全確保――を重点に掲げて推進を図る。交通事故死者数のうち歩行中の割合は4割弱で最も高い。子供や高齢者など歩行者の安全に配慮した安全運転の心構えについて、SOMPOリスクマネジメント株式会社の落合律さんに解説してもらった。
家族3人で水稲43ヘクタールなどを栽培する千葉県袖ケ浦市飯富の株式会社たわら農芸は、厚まきによる育苗箱数の削減や苗箱運搬の機械化など省力・低コスト化を進め、規模拡大に対応する。種もみ1箱200グラムで育苗し、移植面積当たりの箱数を3分の2に削減。作期が異なる主食用米5品種などを組み合わせ、移植を4月中旬~6月中旬、収穫は8月上旬~9月下旬に分散する。設備投資を抑え、野菜との多角化を図るなど、米価低迷の中で経営維持に工夫を凝らす。
【岩手支局】耕作放棄地を活用しようと、花巻市太田の「ひつじ農園はなまき(寺沢義秋(てらさわ よしとし)代表=70歳)」では、2017年から牧羊に取り組んでいる。英国原産「サフォーク種」と雑種を合わせて約100頭を飼育。食肉用として県内に出荷するほか、加工品の販売や観光地化も視野に入れている。寺沢代表は、耕作放棄地で牧羊に取り組む団体の新聞記事を読み、牧羊に興味を持ったという。「自分が住む地域にも耕作放棄地が多く、草刈りが負担になっていたので、牧羊に挑戦してみようと思った」4月から11月は草が茂る場所を選び、数カ所に分けて放牧する。12月から3月は羊舎で飼育。羊舎は、育苗用として使っていたビニールハウスを再利用し、舎内の柵は手作りした。羊肉は食肉用として県内の飲食店などに出荷する。「ブランド化を目指し、稲わらを混ぜたオリジナルの飼料を試作している」と寺沢代表。食肉加工品の販売に向け、現在はジャーキーを試作中だ。「知人に試食してもらい、好評だった。設備が整った業者と共同開発ができればうれしい」同園を花巻市の観光地とする動きも進んでいる。今年3月に県の職員が訪れ、子羊とのふれあいのほか、針を使った羊毛フェルト作りを体験した。寺沢代表は「耕作放棄地の除草が目的で牧羊を始めたが、思いがけない取り組みにつながっている」と笑顔を見せる。
〈写真:育苗用だったハウスを羊舎として再利用〉
福井県越前市 山口 和男さん
兼業農家で水稲をメインに栽培していましたが、2005年に定年退職し、ホウレンソウや白ネギ、カンピョウなど品目を増やしています。主力は、16年から栽培している露地栽培の白ネギで、多い日は1日300キロ出荷しています。病虫害が心配なので、対策として畝立てや草管理に気を付けています。夏の暑さに強い品種を今年から新たに作付ける予定で、収量アップを期待しています。20年に栽培を始めたカンピョウは、実ではなく種を出荷しています。連作障害に強いとされ、出荷した種は出荷先で接ぎ木の台木として使用されています。白ネギなどの露地野菜の補償がこれまでなかったので、水稲共済しか加入していませんでしたが、すべての農産物の価格下落や病気などによる収入減少を補てんする収入保険を知り、すぐに加入を決めました。昨年は、シカによる水稲の食害や白ネギの病害で収入減少になりましたが、収入保険で補てんしてもらえて、とても助かりました。収入保険に加入したので、新しい品種や品目にもチャレンジができます。万が一けがをして管理ができなくなり、農業収入が減少した場合でも対象になるので、安心していろいろなことができるようになりました。お客さまあっての農業なので、今後も安全・安心でおいしいものを作っていきたいです。
▽71歳▽水稲62.7アール、白ネギ75アール、ホウレンソウ1.2アール(ハウス1棟)、カンピョウ15アール
(福井支局)
〈写真:「品質の良いものを作っていきたい」と山口さん〉
【島根支局】「人も馬も生涯にわたって活躍できる場を提供したい」と話すのは、社会医療法人正光会が運営する「さんさん牧場」の大賀満成〈おおが・みつなり〉施設長(57)。益田市で観光牧場を営むほか、就労継続A型事業に取り組み、障害者が馬の世話や農業などに携わることで社会復帰に必要な能力を養うことを目標としている。以前は益田市立馬事公苑を乗馬クラブが運営し、市民に親しまれていたが、施設の老朽化などで2018年3月に廃止。しかし、施設の存続を望む声が多く寄せられたため、行政のサポートの下、医療法人が母体となり、障害者の就業先にもなる施設として19年2月に生まれ変わった。牧場で飼育する馬は、7頭のうち4頭が引退した競走馬だ。観光牧場としての乗用馬やセラピー馬として第二の人生を送っている。ほかにもミニチュアホースやウサギ、ヤギなどを飼育。利用者は動物の世話を通して身体能力を向上させるとともに、積極的な社会性を身に付けていく。20年5月から農福連携に取り組み、ハウス4棟(23アール)、露地(2アール)でタマネギ、カボチャ、キュウリなどを栽培。利用者の就労や生きがいづくりの場が生まれ、新たな働き手の確保につながると見込む。職業指導員の松尾穂乃香(ほのか)さん(24)は、農業関係の高校と大学を卒業。その経験を生かし、馬ふんは農作物を育てる堆肥として利用することを提案した。松尾さんは「定番の野菜のほか、今後は珍しい作物の栽培にも挑戦し、ブランド力を上げていきたい」と話す。農作物は近隣のスーパーや道の駅で販売。売り上げを馬の飼育や施設の運営費用に充て、循環型農業を実現した。これらの取り組みが評価され、「ノウフク・アワード2021」のチャレンジ賞を受賞した。
〈写真:「馬のいる風景をいつまでも残していきたいですね」と話す大賀施設長(右)、職業指導員の松尾さん(中央)と﨏畑雄一郎さん〉
【福島支局】二本松市の渡邊大介〈わたなべ・だいすけ〉さん(36)は、酪農ヘルパーを経て、廃業予定の酪農家から経営を引き継ぎ、今年1月、酪農家へ本格的に転身した。酪農ヘルパーをしていたとき、訪問先の農家に「廃業する予定だ」と聞き、経営を引き継ぐことを決意したという。現在、搾乳牛24頭、育成乳牛11頭、和牛2頭を飼養。自宅から車で10分ほどの牛舎に朝晩毎日通う。休日は小学1年生の次男・悠壬〈ゆうじん〉君が手伝ってくれる。酪農家への新規就農は、牛はもちろんのこと牛舎、牧草地、農機具など準備が大変だ。現在は燃料費が高騰しているため、就農のハードルがさらに高くなっているという。渡邊さんは「廃業予定の農家さんから、酪農に憧れる就農希望者へスムーズに経営を譲れるシステムがあれば」と期待する。毎日1頭ずつ観察することを心掛け、牛舎にカメラを設置し、牛房内の様子を観察。具合の悪い牛にすぐ対応できるようにした。自らの経験を生かし、ヘルパーへの指示板を牛房内上部に設置。搾乳時の注意事項や牛の特徴、癖などが記入されている。「先輩酪農家の経営を引き継がせていただいたので、大事にしながら自分のスタイルに合うように、やりやすくしていきたい。軌道に乗れば頭数を増やしたい」JAふくしま未来二本松営農センター岳山麓出張所畜産係の武田佳樹〈たけだ・よしき〉さんは「ヘルパーで学んだ技術を生かし、地域の酪農を盛り上げていってほしい」とエールを送る。
〈写真:牛の観察を欠かさない渡邊さん〉
▼この4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。少子高齢化が進む中、政策に若者の意思を反映しようと選挙権を18歳以上に拡大したことに関連した見直しという。成年年齢は、明治9(1876)年の太政官布告で定められ、民法などに引き継がれたそうで、およそ150年ぶりの見直しだ。
▼携帯電話の契約やクレジットカードの作成、ローンを組むことが親の同意なしに可能になる。一方で、飲酒や喫煙、競輪や競馬など公営ギャンブルは、健康被害や依存症対策として20歳のまま維持される。親戚の集まりなどは、酒をつがれるかどうかが成人と子供の境だから、やや中途半端な印象だ。
▼そもそも成年年齢を20歳とした理由は明確でなく、当時の日本人の平均寿命(40歳代前半)や精神的な成熟度などの総合判断と考えられている。ただ、自分の20歳の頃を思い返すと失敗や未熟な行動ばかりで恥ずかしい限り。少し年齢を引き上げられても文句が言えないくらいだ。
▼政府は、18、19歳を狙った消費者トラブルへの警戒を呼びかける。もうけ話や出会い系などうまい話にはご用心を。人を見る目と断る勇気は身に付けておきたい。