今週のヘッドライン: 2022年01月 1週号
青森県南部町の人材サポートなんぶ協同組合(山本又一代表理事)は、首都圏からの移住者を含めた20、30代の4人を職員として雇用し、主に果樹や水稲、野菜など農繁期の作業に派遣する。コロナ禍で関心が高まる農村との多様な関わりを求めている若者の新たな受け皿となっている。昨年4月に東京から移住した職員の加納良介さん(32)は「南部町のさまざまな農家さんの所をローテーションで回り、作業することで幅広い視点や技術が身に付く。自分のやりたいことを実現する第一歩として得られるものがたくさんある」と話す。職員は安定した収入を得ながら地域の農業を学ぶことができ、受け入れ側は定住者を増やして、農業をはじめ地域の将来を支える人材育成ができると期待を寄せる。
大阪府能勢町の「里山技塾」は、副業としてクリ栽培をしたい人に向けて、地元のベテラン農家が栽培の基本を教える講座を開く。レストラン経営者や会社員など、2021年9月まで学んだ第1期生20人が園地を借りるなど栽培を始めている。遊休園地の活用につながり、作付面積は準備中も含め計1ヘクタールとなった。「里山は副業の宝庫。仕事を組み合わせて生計を立てれば、小さな園地も活用できる」と事務局を務める伊藤雄大さん(36)。講座では、技術を自主的に学ぶ面白さも伝え、環境保全型農業や新品種導入など卒業生ごとの個性が生まれている。
愛知県の「空き牛舎有効活用推進協議会」(事務局=愛知県酪農農業協同組合)は、畜産への新たな新規就農システムとして、夫妻単位で独立就農と雇用就農を組み合わせる「兼業農家制」を考案した。第1号として、愛知県半田市の俵絵美子さん(32)が50頭規模の肉用牛肥育の経営主となり、夫の良介さん(37)は親牧場となる乳肉複合経営の大規模法人で正社員として働く。法人側は人材確保に、独立側は世帯収入の安定や技術習得などに利点がある。産地に中小規模の経営体を増やすことで、牧場同士で作業協力する体制を構築し、人手不足解消など酪農産地の振興につなげるのも狙いだ。
新型コロナ克服と経済対策を柱とする2021年度補正予算が12月20日、成立した。農林水産関係では、米価の需給・価格の安定に向けて20年産米15万トンを市場隔離する「コロナ影響緩和特別対策」(特別枠対策)には165億円を確保。「新市場開拓に向けた水田リノベーション事業」は420億円を措置し、新市場開拓に必要な施設整備を支援するなど産地の取り組みを後押しする。年末に決定する22年度当初予算案と合わせた「16カ月予算」と位置付け、生産基盤の強化や農林水産物・食品の輸出力の強化、スマート農業などを推進する方針だ。
畜産の現場を支えるNOSAI獣医師。全国で約1700人が、診療などに日夜奔走している。NOSAIかごしま(鹿児島県農業共済組合)中部家畜診療センター北部診療所は、獣医師6人で伊佐市と湧水町の肉牛の繁殖農家など300軒ほどを担当する。和田三枝副所長(40)と新人の米丸友佳子獣医師(26)の診療に同行し、尽力する姿を追った。