今週のヘッドライン: 2021年07月 4週号
梅雨前線が6月末以降、西日本から東日本に停滞し、大気の状態が非常に不安定となり、西日本から東北地方の広い範囲で記録的な大雨となった。各地で圃場の冠水や土砂流入など農業分野の被害が発生。被災地域のNOSAIは共済金の早期支払いや収入保険のつなぎ融資に向け、被害確認や迅速で適正な損害評価などに取り組んでいる。
政府は13日、特許など知的財産に関する施策をまとめた「知的財産推進計画2021」を決定した。農業分野を重点7施策の一つに位置付け、知財活用環境の強化として、改正種苗法に基づく優良品種の海外流出防止や海外での品種登録の推進、和牛遺伝資源の保護・管理など制度普及や環境整備の方針を明記した。農林水産物・食品の輸出拡大に向け、競争力を強化してその価値を最大限発揮し、国内農業・農村の所得向上や活性化につなげる考えだ。
農山漁村滞在への関心の高まりなどを背景に、農林水産省は9日、農泊推進研究会を発足し、初会合を開いた。新型コロナウイルス感染症の収束後も見据え、景観や食文化など地域資源を生かした体験メニューや、企業のリモートワークなどへの対応を検討する。
日本ファームステイ協会副会長の皆川芳嗣元農林水産事務次官が座長を務め、観光業者や農泊支援団体などで構成。関係者間の情報共有を図りながら、農泊の利用拡大と地域活性化につなげる。
NOSAI山形(山形県農業共済組合)では、自然災害や万一の事故への備えを促し、地域農業の維持・継続に尽力する共済部長(NOSAI部長)が活躍している。推進では対話を重視し、自身の経験も交えながら丁寧に説明する。「想定外といわれる被害が頻発している」と口をそろえ、農業保険の重要性を訴える庄内支所管内の共済部長2人に話を聞いた。
肥料原料の国際市況が上昇し、秋肥価格が値上げされた。肥料原料は大部分を輸入に依存していることから、旺盛な肥料需要による今後の影響も懸念されている。農林水産省はホームページ(HP)にコスト削減につながる情報を掲載するページを設けた。肥料の購入から使用、土壌管理などの観点で、対策の選択肢を整理している。作物の品質や収量を維持しつつ、国際市況の影響を回避する方法として生産者へ提案している。
リタイア後の暮らしの支えとなる農業者年金制度が見直され、2022年から、より加入しやすく、受給しやすい仕組みとなる。制度のメリットと改正のポイントについて、農業者年金基金企画調整室に紹介してもらう。
農林水産省は先ごろ、オーガニック市場の現状と将来展望をテーマにした勉強会をオンラインで開催した。みどりの食料システム戦略では、2050年までに有機農業の取り組み面積を25%(100万ヘクタール)とする目標を掲げる。日本の有機食品の売り上げは、17年で1850億円と09年比で約4割拡大し、30年には3280億円に伸びる見通しだ。勉強会では、消費地や生産地にあるスーパーの事例などを紹介。市場拡大に向け、消費者に環境保全に寄与する有機農業の価値発信が重要との意見などが挙がった。
「安心の未来」拡充運動中央推進本部(本部長・髙橋博NOSAI協会会長)は先ごろ、「令和3年度農林水産省経営局関係業務功績者等表彰」「令和3年度『安心の未来』拡充運動中央表彰」の決定を発表。7日に開催した全国参事会議で両賞の表彰を行った。農林水産省経営局関係業務功績者等表彰は、農業保険の推進において顕著な実績およびほかの模範となる優秀な取り組みを行った役職員や組合、支所などを表彰する。「安心の未来」拡充運動中央表彰は、農業保険の推進において、優秀な事業成績をおさめた組合等および顕著な実績を上げた組合等を表彰する。農林水産省経営局関係業務功績者等表彰の5組織と、「安心の未来」拡充運動中央表彰最優秀賞の3組織の取り組みを紹介する。
【鹿児島支局】「少しでも農家の作業負担を軽減し、信頼されるような取り組みをしたい」と話すのは、伊佐市大口の北渡瀬務さん(41)。個人事業で農薬散布ドローン(小型無人機)を使用し、水稲、大豆、サツマイモなどの防除を受託している。北渡瀬さんは、2017年7月にドローンを使った薬剤散布事業を開始。ドローンについて調べるところから始め、半年かけて自作した。「電子機器の修理やコンピューター関係の仕事をしていたので、ドローンについては興味があった」と振り返る。薬剤散布事業を始めた当時はドローンが浸透していなかったため、信用してもらうのに時間がかかったという。農家の会合への参加や実演会を実施するなど、顧客の獲得に力を入れた。初年度は3戸で約10ヘクタールだった依頼件数が、翌年には100ヘクタールを超えるまでに増加。ドローンを追加で2台導入した。
〈写真:「天気予報はまめに確認し、五つの情報サイトを使い、2週間先まで確認している」と北渡瀬さん〉
【高知支局】高知市でキュウリ60アールを栽培する高橋洋輔さん(38)は「収入保険制度には、NOSAI職員の説明を受け、制度開始後2年目に加入しました」と話す。収入保険や今後の営農のことなどを聞いた。
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〈写真:「今年さらに面積を26アール増やす予定なので、安心して営農を維持するために、収入保険には今後も継続して加入したいですね」と高橋さん〉
【宮崎支局】「一頭一頭の性格も蹄の形も違う。その中で、自分の理想の蹄に仕上げることを心掛けている」と話す宮崎市田野町の新坂光さん(32)。父の光治さん(65)と繁殖母牛120頭を飼育しながら、地域の削蹄師として活躍している。新坂さんは県農業大学校に在学中、2級認定牛削蹄師の免許を取得。就農後、地域の先輩にアドバイスを受けながら活動を始めた。削蹄師として活動を始めて12年目で、1日10頭、月15日程度の削蹄に取り組んでいる。「農家さんに『足を痛がっていた牛が良くなり、しっかりと立つようになった』と言っていただけるのがうれしい」と話す。農家からの依頼は頻繁にあるが、特に子牛の競り市前や登録検査前が忙しいという。今後はスケジュールをしっかり管理して、家業と削蹄師の両立を目指していく。田野町の肥育農家・日高庄三さんは「牛に合わせながら削蹄の仕事をしているので尊敬する。夏場は体力的に大変だと思うが、削蹄師がいないとたくさんの農家が困るので、これからも頑張ってほしい」とエールを送る。
〈写真:削蹄前に蹄の状態を確認する新坂さん〉
【福島支局】東日本大震災と原発事故からの復興を進める葛尾村に、体験型の観光牧場「かつらおヤギ広場がらがらどん」が今年5月にオープンした。牧場ではヤギ約70頭を飼育する。栃木県那須塩原市でヤギ牧場を営み、復興関連の仕事で村に来ていた会津勉さん(68)は、村の復興につながる事業を模索していた。村民と交流する中で、観光牧場を造ろうと動き出し、株式会社かつらおファームを立ち上げた。牧場では、ヤギの乳から作ったせっけんやパンを販売。マグカップなどのオリジナルグッズもある。今後は、せっけん作りや野菜の収穫体験ができる施設を充実させていく予定だ。
〈写真:「県外からも多くの人が来てくれる。村に活気が戻るように、お客さまに喜んでいただける施設にしていきたい」と会津さん〉
▼生まれ育った集落に「機械屋」と呼ばれるおじさんがいた。店舗は持たず農機具店などに勤めている訳でもない。農機具が故障したとき、声をかけるとすぐ駆けつけて修理する。便利屋さんのような存在だ。初めてバイクを買う際には、バイク屋を紹介してもらった。
▼農作業の手伝いで畑にいると、結構な頻度で父親を訪ねて来て5分ほど話すと去って行く。そんな姿をよく目にした。農機の修理だけで生計を立てられたのか、別に仕事をしていたのかは知らない。ほかにも多くの人が畑に顔を出し、世間話をしたり、何らかの用事を済ませたりしていた。
▼農林水産省の「新しい農村政策の在り方検討会」などの中間とりまとめは、農業と農業以外の仕事をする「半農半X」の推進を明記した。地域の活性化には、専業農家だけでなく、農業・農村と関わりを持つ人を増やすべきとの考えからだ。
▼集落には、山菜採りや川漁師などもいて、単一品目の専業農家の方が新参だ。多様な人が暮らすから、集落がにぎやかだったのかも。