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今週のヘッドライン: 2021年07月 3週号

災害に強い経営モデルに 事業継続計画(BCP)で非常時の対応を明確化(1面)【2021年7月3週号】

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 災害や事故などに備え、事前に重要業務の継続や復旧の手段をまとめておく事業継続計画(BCP)が、農業分野でも活用され始めている。九条ネギを中心とした生産・加工・販売で大規模経営を展開する、こと京都株式会社(本社:京都市)は、新型コロナウイルス感染症、台風、震災の三つのリスクを想定した独自のBCP「防災指針書」で非常時の役割分担を明確化。台風対策では、スマートフォンでの気象情報の共有や倒伏前の一斉収穫などを行う。山田敏之代表(59)は「規模拡大につれてリスクも大きくなる。異常気象に強い経営モデルを構築したい」と話す。

(1面)

〈写真:「台風接近までにどれだけ在庫を確保できるかが重要」と保冷庫内で、こと京都株式会社(本社:京都市)の山田敏之代表〉

米の多様な情報活用へ 農水省が「スマート・オコメ・チェーン」(2面・総合)【2021年7月3週号】

 農林水産省は、米の生産高度化や付加価値向上、流通の最適化などにつなげるデータ連携基盤「スマート・オコメ・チェーン」の構築に動き出している。6月にコンソーシアム(共同事業体)を設立し、生産者や流通事業者、実需者などに広く参画を呼び掛けている。データを活用する民間主導での日本農林規格(JAS)の制定も進め、2023年産米からの利用開始を目指す。毎年10万トン程度減少している主食用米の需要減少に歯止めをかけ、輸出拡大にもつなげる方針だ。

(2面・総合)

2021年5月輸出 前年比3割増の885億円 牛肉、日本酒で伸び高水準(2面・総合)【2021年7月3週号】

 農林水産省は6日、5月の農林水産物・食品の輸出額は前年同月比212億円増の885億円(うち農産物603億円)と発表した。3カ月連続での1千億円超えはならなかったものの、同31.6%増と高水準が続く。特に米国向けのアルコール飲料や牛肉などが伸びた。牛肉は同202.7%増の39億1600万円、日本酒は同164.4%増の30億9300万円となった。

(2面・総合)

代謝プロファイルテストが畜産経営に貢献 繁殖や乳量の改善に効果(3面・農業保険)【2021年7月3週号】

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 「獣医師のアドバイスで、産後健康に乳を出すようになった。今年の夏前の乳量は昨年の1日1頭当たり27キロから30キロに上昇した」と話すのは、兵庫県明石市大久保町大窪の住元誠さん(24)。NOSAIひょうご(兵庫県農業共済組合)の代謝プロファイルテスト(牛の健康診断)を活用し、乳量向上につなげている。同市藤江で酪農を営む伊藤靖昌さん(37)は、夏場の暑熱対策の効果の確認などに利用。牛を健康に保つことで鳴き声や臭いを抑え、都市部での酪農に生かしている。

(3面・農業保険)

〈写真上:子供の頃からなじみの獣医師と相談する兵庫県明石市大久保町大窪の住元誠さん(左)〉
〈写真下:餌を切らさないよう注意する兵庫県明石市藤江の伊藤靖昌さん〉

腰痛の予防・軽減に 背中・脇腹のストレッチ__大山リハビリテーション病院リハビリテーション部の理学療法士・森田鉄二さんに聞く(5面・すまいる)【2021年7月3週号】

 中腰、前かがみでの作業や重たいコンテナの運搬など、腰にかかる負担から腰痛に悩む農家は多い。鳥取県西部農業改良普及所(米子市)では、白ネギ生産者に多い腰痛の予防・軽減に「腰ラクラク白ねぎ体操」を推進している。腰痛を抱える多くの農家が、誰でも気軽に畑で取り組めるのが特徴だ。体操のやり方や注意点について、大山リハビリテーション病院リハビリテーション部の理学療法士・森田鉄二さんに解説してもらう。

(5面・すまいる)

イネ稲こうじ病 防除技術を体系化 土壌改良で抑制(7面・営農技術・資材)【2021年7月3週号】

 農研機構はこのほど、穂に黒い塊が生じる水稲の主要病害「イネ稲こうじ病」の防除技術体系を開発した。土壌改良資材と薬剤散布適期連絡システムを組み合わせ、3年間繰り返すと、防除が不要になる程度に発生を抑えられる。移植前に転炉スラグや生石灰を施用し、病気が発生しにくい土壌環境を構築。気象データを基に出穂前の短い防除適期を通知する電子メールが農家に送信され、シメコナゾール粒剤や銅剤を確実に散布できる。多発生リスクがある圃場で、転炉スラグとシメコナゾール粒剤を用いた現地実証事例では、株当たり病粒数が無処理区の0.81個に対し、処理区は規格外(0.5個以上)とならない0.11個に抑えられた。

(7面・営農技術・資材)

活性化・里山保全に貢献 水産加工会社が農業部門拡充【7月3週号 石川県】

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 【石川支局】「どこにも負けない野菜を作り、地域農業の活性化と里山保全に努め、社会貢献していきたい」と話すのは、七尾市西三階町〈にしみかいまち〉の農業生産法人株式会社スギヨファーム取締役統括の川上和孝〈かわかみ・かずたか〉さん(49)。水産加工品で北陸地方の人に親しまれている株式会社スギヨが、2007年に農業事業を始め、12年に農業部門が独立し法人化した。耕作放棄地を活用し野菜や果樹を栽培し、当初の経営面積約5ヘクタールは60ヘクタールに拡大。規格外品を活用し6次産業化にも取り組む。

〈写真:「石川県は水がおいしくて、いい野菜が育ちます」と川上さん〉

人工授精技術を磨き繁殖経営で独立へ【7月3週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】「自分で種付けした牛が初めて受胎していることが分かり、すごくうれしかった。無事に生まれてきてほしい」と話す入来町の松下田大喜さん(23)。株式会社萩原人工授精所(薩摩川内市、萩原廣宜代表、繁殖牛33頭、種牛10頭)で家畜人工授精技術を磨きながら、実家の繁殖経営(繁殖牛26頭)を手伝っている。千葉県から昨年Uターンし、実家の手伝いから始めた。父・一幸さん(55)の勧めで、研修を兼ねて同社で働いている。一幸さんや先輩に習いながら技術を覚えていった。実践を積み少しずつ作業のスピードが上がり、自信が付いてきたという。「先輩方に『上達するには実践で感覚をつかむことが大事』と言われた。牛には一頭一頭に癖があるのでまだまだ難しいが、自分のやり方を見つけていきたい」

〈写真:「普段から牛をよく観察するようにしています」と松下田さん〉

野生獣阻止・雑草を抑止 ネットとシート一体化「ダイブガード」【7月3週号 福井県】

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 【福井支局】緑化資材を企画・販売する株式会社白崎コーポレーション(鯖江市)は、イノシシなどが道路上で車両と衝突する「ロードキル」を抑止する「ダイブガード」を今年4月に商品化。今後、高速道路の路肩のフェンスに設置する予定だ。高速道路関係者は、以前からロードキル対策に苦慮してきた。車両の破損、運転手のけが、場合によっては死に至る危険がある。ロードキル対策として開発されたダイブガードは、防草シートとネットを一体化した。ネット部分をフェンスに沿って張り、防草シート部分をフェンス下に敷き設置する。ネットは細かい網目になっており、60センチの高さで向こう側が見えない目隠し効果があるという。防草シートは雑草対策に加え、餌となる雑草の根を絶やすことで、掘り起こされることやフェンス下からのくぐり抜けを防止する。同社グリーンナップ事業東日本営業部・山本泰久部長は「設置後は、草刈りやメンテナンスといった保全管理の負担が軽減できる。さらに、近年は園芸施設への小型動物の侵入被害が多発しているので、ダイブガードを被害対策に流用できないか実証していきたい」と話す。

〈写真:「特殊な縫製技術でネットと防草シートが一体になっている」と山本部長〉

アーチパイプ片側にニガウリ定植 作業効率、品質が向上【7月3週号 群馬県】

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 【群馬支局】館林市青柳町の内田邦雄さん(73)は、妻の茂子さんと息子夫妻、パート従業員とともに、露地とハウス合わせて1.1ヘクタールでニガウリを栽培する。ニガウリ栽培は2002年に始めた。現在は水稲1.6ヘクタール、冬はチヂミホウレンソウ50アールも作付ける。露地のニガウリは、5年ほど前から独自の栽培方法で取り組む。通常はアーチパイプの両側に定植するのが一般的だが、片側だけに定植し、アーチパイプに沿って誘引して反対側まで伸ばす。一般的な栽培方法と比べ収穫量は変わらず、アーチパイプに沿って葉かきや収穫などができるため、手間が省け、作業効率が良くなるという。また、太陽光がよく当たり、品質向上につながるという。「つるは縦と横に繁茂するので作業に負担がかかる。この栽培方法は家族や従業員の作業の軽減にもつながる」と内田さん。

〈写真:家族やパート従業員と摘心をする内田さん。間口4.5メートルのアーチパイプに片側だけ定植している〉

安全・正確・丁寧に ドローンでの農薬散布に女性チームが活躍【7月3週号 北海道】

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 【北海道支局】女性だけで構成された農薬散布チーム「MAMA MIACAT!(ママミーアキャット)」が、2020年5月から旭川市近郊を拠点に活動している。ドローン(小型無人機)を使い、丁寧な仕事ぶりが農家に評判だ。メンバーは旭川市に住む川田容子さん(42)、東京都に住む中井惠子さん(52)、原奈央子さん(40)の3人。川田さんは「初めてにしてはいいチームワークだったと思います。農家さんから信頼を得られるよう、対話を大切にしながら活動していきたい」と意気込む。同チームは、ドローンを使った農薬散布の第一人者・請川博一さんの勧めもあり、ドローンスクールを通じて知り合った中井さんと原さんに加え、請川さんがドローン事業で面識のあった川田さんにも声をかけ結成。3人ともドローンでの農薬散布は未経験のため、活動1年目は、旭川市の農家の協力を得ながら実際の散布研修に励んだ。使用する機体は国産農業用ドローン「AC101」。重さ約7キロで、最大積載量8リットル、1バッテリーで最大2.5ヘクタールの散布が可能だ。中井さんは「散布時は近隣の農地に飛散させないよう注意を払っています。今年も適期防除に努めたい」と話す。活動2年目を迎えて、原さんは「農家さんから『丁寧にやってくれてありがとう』と言ってもらえたことがうれしいです。これからも安全・正確・丁寧を意識して、技能向上を目指したい」と意欲を見せる。

〈写真:ドローンを使い効率的に農薬を散布するメンバー。左から川田さん、中井さん、原さん〉

防風林「危機管理は最悪のシナリオを前提に【2021年7月3週号】」

 ▼梅雨も明けない状況では気が早いと言われるか。しかし、7月に入ったら台風への備えも始めたい。過去30年間の平均値で、台風は年に25個発生し、12個弱が日本に接近、3個が上陸する。接近・上陸は7~10月に多い。「平成30年7月豪雨」では、6月28日~7月8日に梅雨前線と台風7号が西日本中心に大雨被害をもたらした。
 ▼台風による被害は温暖化が進むと激甚化する。環境省が3月に公表したリポート「勢力を増す台風」では、温暖化による環境変化を想定。「令和元年東日本台風」のデータを使い、同様の位置で発生し、同様の日程(10月11~14日)で台風が上陸した場合の影響をシミュレーションした。
 ▼結果は、気温が2度上昇すると風速は平均2.6メートル増、4度上昇では3.4メートル増と算定。降水量は、2度上昇すると平均6%増、4度上昇では22%増となった。東日本台風の風速は最大55メートル、降水量は千ミリに達した場所もある。温暖化で台風が発達する条件が整うことが要因だ。数%の変動でも影響は小さくない。
 ▼リポートは、最悪のシナリオを基にした危機管理を訴える。現実の大災害を見てそのとおりだと納得する。


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