今週のヘッドライン: 2021年07月 1週号
濃厚飼料原料の国際価格高騰が続く中、水田転作として子実用トウモロコシへの期待が高まっている。2020年の作付面積は約690ヘクタールと5年間で4倍に増えた。10アール当たり労働時間は主食用米の5%程度の1.2時間と短く、耕種側には規模拡大によって小麦・大豆以上の時間当たり所得確保が見込める。また、栽培で堆肥を10アール当たり3~5トン施用するため、畜産側の家畜ふん処理の課題にも対応できる。農林水産省は実証事業など子実用トウモロコシの普及を支援しており、栽培体系確立や販路・流通手段の確保などが現場で模索されている。
8月下旬から収入保険の加入申し込みが、自宅のパソコンなどからオンラインでできるようになる。電子手続きサービス「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」が拡充され、2022年を補償期間とする収入保険から申し込み可能だ。
さらに、22年を補償期間とする加入から、自動継続特約が導入される。申出書を提出すれば、翌年以降の契約手続きは、確定申告後に一度必要書類を提出する形に簡素化できる。
政府は6月18日、規制改革推進会議の答申を踏まえた規制改革実施計画を閣議決定した。農業分野では、農協改革の推進や農地利用の最適化、農産物検査規格の見直しなど11項目を盛り込んだ。野上浩太郎農相は22日の会見で「農林漁業者の所得向上や農山漁村の活性化につながるよう現場の声をよく聞きながら取り組みを進める」と述べた。農協改革については「実施計画の閣議決定がなされ、政府としての方向性が決まった」とし、改正農協法の付則にある5年後見直しとして、「農協の自己改革実践サイクルの構築を前提に農林水産省が指導・監督などを行う仕組みを構築していきたい」と強調した。
農林水産省は6月18日、水田活用の直接支払交付金の申請に必要な営農計画書について、6月末の提出期限以降も修正を認めると発表した。新型コロナウイルス感染症の影響で、作付け転換の話し合いができず、手続きが遅延している地域農業再生協議会が対象。営農計画書に記載した主食用米の作付面積を飼料用米や輸出用米の仕向けに修正できる。
2022年1月から保険期間が開始する収入保険の契約から、10~19年の10年間の被害率が反映され、保険料算定に用いる保険料標準率が改定される。自然災害や新型コロナウイルス感染症など予期せぬ被害が発生する中、収入の約1%相当の保険料で加入者の経営安定に貢献することは変わらない。保険料標準率の改定について稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
都市住民などの消費者を農業ボランティアとして受け入れる活動は、高齢化や過疎化に直面する地域農業の活性化につながると期待されている。多くの人に持続的に参加してもらうには、受け入れ側の対応が大切だ。10年以上にわたり農業ボランティアを受け入れる、兵庫県丹波篠山市真南条の農事組合法人真南条営農組合の酒井勇顧問(78)に話を聞いた。
国産大豆などの振興を図る「2020年度(第49回)全国豆類経営改善共励会」(主催・JA全中、JA新聞連)の受賞者がこのほど決定した。全国から出品された44点から、栽培技術や生産コスト低減などに優れた9点が選ばれた。大豆の家族経営の部と集団の部で、農林水産大臣賞を受賞した2経営体の経営概要を紹介する。
【岩手支局】軽米町晴山で2003年からピーマンを栽培する笹山正義さん(78)と妻のき子さん(71)は、予約制でピーマンの苗を販売している。育苗管理を改善したことで、太くて丈夫な苗になり、出荷先の農家に好評だ。また、露地栽培とトンネル栽培を併用することで、長期出荷を可能にした。予約制の販売は8年前に始めた。今年は3月上旬に播種し、ビニールハウス4棟で1万本を育苗。5月中旬には、予約を受けていた地元の農家に苗を出荷した。苗は、セルトレーに点まきして、発芽後はポットへ1本ずつ移植。運びやすくするために育苗箱に並べている。笹山さん方では、露地栽培とトンネル栽培(合計30アール)で1700本のピーマンを作付ける。昨年は9200キロをJAに出荷した。トンネル栽培は、知人から譲り受けたリンドウのU字支柱を再利用。ピーマンの高さに合わせて小さく加工し、初期費用を抑えた。正義さんは「トンネル栽培は雨や霜の対策となり、病気の発生を防ぐ。収穫期が早いので長期間出荷できる」と話す。
〈写真:「今年も順調に生育している」と笹山さん夫妻〉
【山形支局】「昔は広告といえばチラシ配布くらいのものだった。いろいろな方法で楽しみながら山形の果物をPRしていきたい」と話すのは、天童市成生の奥山農園園主・奥山吉浩さん(58)。肥育牛約170頭を飼育するほか、約3ヘクタールでサクランボやリンゴ、「ラ・フランス」などの果樹を栽培する。自分が手掛けた作物は自ら売りたいと考え、同園のホームページやオンラインフリーマーケットサービスなど多様な販売方法を展開する奥山さんは、ユーチューバーと共同で新たな取り組みを始めた。同園のサクランボを広く紹介するため提携したのは、ユーチューブチャンネル「金髪物語」を運営する「さとちゃん」こと青木聖美さん(25)と「はるべ」こと熊谷春香さん(26)。約1年でチャンネル登録者数が千人を突破し、人気上昇中の女性2人組だ。山形市出身の2人はスノーボードやカヤック、山登りなどのアウトドア体験を通して県内の名所などを動画で紹介している。 動画の撮影をしたのは、サクランボの葉摘み作業。収穫間近となったサクランボ園で、奥山さんの指導を受けながら作業に取り組んだ。
〈写真:奥山さん(左)の指導で脚立の上で葉摘み作業をする青木さん、熊谷さん(中央)は作業風景を下から撮影〉
【福井支局】「人が牛舎にいる時間を短くして、牛を休ませることも大切な仕事」と話すのは、合同会社南牧場・代表社員の南一輝さん(勝山市平泉寺町、35歳)。2017年に遠隔監視システム「養牛カメラ」を導入し、乳用牛52頭を効率よく管理している。就農する前はサラリーマンだった南さんは、酪農を始めた当初から「効率化できる部分が多いのでは」と思っていた。そんな時、牛の分娩時期が重なり、短期間のうちに何度も真夜中に畜舎に走る経験をした。分娩確認のため畜舎の照明を付けると、ほかの牛が起きてしまい、ストレスがかかってしまうことも問題だった。養牛カメラは牛の様子を携帯電話などから確認できる監視システムで、付属照明の操作もできるため、自宅にいても安心して分娩を見守ることができる。導入後は、人が畜舎にいる時間が短くなり、牛のストレスが減って乳量が増えたという。
〈写真:飼養管理の効率化を進める南さん〉
【青森支局】「自然災害や価格低下などを補償してくれるから安心して農業ができる」と話す七戸町中岫の中岫均さん(63)。水稲や野菜など多品目を栽培し、多様なリスクに備え収入保険と園芸施設共済をセットで加入している。中岫さんの経営面積は、水稲2.5ヘクタール、ニンニク1.3ヘクタール、ナガイモ70アール、アピオス15アール、トマト17アール(ハウス6棟)。6年前に園芸施設共済、2年前には収入保険に加入した。青色申告は約20年前から始めている。収入保険の加入条件を満たしていたこと、将来のことを考えて加入を決意したという。「もともとハウス8棟でトマトを栽培していたが、昨年12月中旬の大雪(令和3年豪雪)で4棟がつぶれてしまった。農家を20年やって初めての経験だった。損害評価などでNOSAIには迅速に対応していただき、共済金を受け取ることができた」。つい最近ではナガイモとアピオスなどの野菜価格が下落した。「補償対象だったため保険金を受け取れて本当に助かっている」と振り返る。
〈写真:アピオス畑で「後継者を募集している。やる気のある人ならどんな方でも大歓迎」と中岫さん〉
▼あおり運転の問題を機に、自動車のドライブレコーダー売り上げが急増し、現在の普及率は4~5割とみられている。テレビのニュースでは、暴走や逆走、道路上の迷惑行為などドライブレコーダーの映像が頻繁に使われるようになった。プライバシーの問題があるとしても、映像が交通違反や迷惑行為の抑止など安全性向上につながるものと期待している。
▼自動車では、義務化されたシートベルトのほか、エアバッグや衝突軽減ブレーキなどの装備も普及が進む。2020年の交通事故死者数は2839人で、4年連続で戦後最少を更新し、初めて3千人を下回った。安全装備だけの成果ではないだろうが、死亡事故減少に確かに貢献している。
▼農業分野は、農作業中の死亡事故が毎年300件前後で推移し、9割弱を65 歳以上層が占める。就業人口10万人当たりの死亡率は建設業の3倍近く、減少の兆しはない。
▼農林水産省は、シートベルト非着用時の警報装置義務化など農作業環境の安全対策強化を打ち出している。既にある技術の応用だ。1人でも死亡事故を減らせるよう、早期の実現を望む。