今週のヘッドライン: 2021年06月 3週号
「昨年『燻(いぶ)り麦酒(ビール)漬け』の売り上げはコロナで落ち込んだが、今年は販路を開拓し、持ち直している。しっかりと栽培や加工に取り組み、良い製品を届けたい」と話すのは、秋田市雄和種沢にある有限会社まこと農産の佐藤樹代表(37)。燻り麦酒漬けは、秋田名産のダイコンの漬物「いぶりがっこ」をビール漬けで作った商品で、自社で栽培から加工まで一貫して行い、経営の柱となっている。2020年は新型コロナウイルスの影響で燻り麦酒漬けの売り上げが減少し、大雨でミニトマトが冠水。今年は、新たにネギを導入するなどリスク分散も視野に入れて経営再建を進めている。
議員立法の「改正鳥獣被害防止特別措置法」は9日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。被害防止計画に基づく対象鳥獣の捕獲従事者について、猟銃所持許可更新時の技能講習免除措置の期限を2027年4月15日まで延長。市町村の要請を受けた都道府県が実施する広域的な捕獲活動に対して国が財政面で支援することなども規定した。そのほかジビエ(野生鳥獣肉)の有効利用の促進や人材育成の充実強化なども盛り込む。6月中旬にも公布し、3カ月以内に施行される。
組合員とNOSAIをつなぐNOSAI部長。地域ごとにNOSAIが委嘱し、農業保険関係の書類や広報紙の配布などを通じて、制度を周知する役割を担う。全国各地で自然災害や病虫害が頻発する中、円滑な事業運営と農家の経営維持に欠かせない存在だ。地域で活躍するNOSAI部長の仕事内容や役割について、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
NOSAI協会(全国農業共済協会)は5、6の両日、獣医学系大学の学生を対象としたNOSAI団体獣医師職員の採用説明会を開いた。オンラインで実施され、2日間で全国の学生約80人が参加した。
愛媛県八幡浜市でかんきつ類を中心に果樹500アールで経営する菊池正晴さん(69)は温州ミカン150アールで、1樹の片側に1年ごとに結実させる隔年交互結実法を実践し、収量安定や省力化を実感している。冬に片側の結果枝を強剪定(せんてい)することで、夏の摘果作業が省略され、樹形が単純化して雇用者も管理が分かりやすい。規格外を除いた10アール当たり収量が2.5トンと慣行並み。枝の更新が進むため、カイガラムシ類など病虫害を受けにくく、有機JAS認証に適合した農薬で発生を抑えている。
農林水産省は7日、2021年産温州ミカンの予想生産量は20年産生産実績比で6千トン減の76万トンと発表した。産地によるばらつきはあるものの、全国的には着花量が確保されているとし、高品質果実の安定生産・出荷を呼び掛けている。
梅雨時期を迎え、今年も局地的な豪雨や河川の増水などで被害に遭わないよう十分に警戒したい。万が一のときは早急な避難も必要だ。市町村から出される避難情報を活用するポイントについて、合同会社ソナエルワークス代表で備え・防災・BCP策定アドバイザーの高荷智也さんに教えてもらう。
【岩手支局】一関市藤沢町の「ななちゃんの会(小野寺梅子会長=67歳、会員3人)」では、除草作業の労力軽減を目的にヤギを飼育し、ヤギの生乳を使用した「手づくりヤギミルク石けん」を製造・販売している。無添加で肌に優しい素材で作られているせっけんは、消費者から好評だ。せっけん作りはすべて手作業。ヤギの生乳をはじめパーム油やココナツ油などを使う。アルカリ性から弱酸性に変化させるため、3カ月間熟成させて完成する。「添加物を使用していないため肌に優しい。乾燥肌やかゆみが改善したというリピーターも多くいる」と小野寺会長。
〈写真:固まったせっけんを切断する会員〉
【秋田支局】「複数の作物を手掛ける複合経営こそ収入保険は必要不可欠だと思う。経営規模が大きくなるほど想定外のことが増えてくる」と話すのは、にかほ市象潟町の須田貴志さん(46)。今年1月に株式会社権右衛門(従業員3人)を立ち上げ、水稲は昨年比で2倍超の30ヘクタール、ネギは7倍超の1.5ヘクタールを作付ける。須田さんが収入保険に加入したのは2019年。規模を拡大していく中で、新たにネギに取り組むため、失敗するリスクに不安を感じていた。昨年は長雨の影響で水稲とネギのどちらも被害を受けたという。水稲は2ヘクタールほどが冠水し、等外となった。ネギは水はけが悪く定植できない圃場があったことや、定植後に軟腐病が発生したことから収量が確保できなかった。「水稲は毎年、新規の圃場を受託し面積が増えるため、圃場の特性を把握できずに作付けることがある。収入保険だと、このようなことが原因で被害が発生しても補償の対象となるし、今回はつなぎ融資を受けることができた」と話す。
〈写真:「初めての取り組みで何が起きるか分からない。収入を補償してくれる収入保険は魅力的だった」と須田さん〉
【石川支局】能登町中斉の「ひらみゆき農園」代表・平美由記さん(ブルーベリー300本、43歳)は今年4月、小松市で染料商品を開発する合同会社グリーンジョブと共同で、「能登ブルーベリーマスク」を商品化した。ブルーベリー染めの同商品は4色あり、コロナ禍でのマスク生活に彩りを添える。マスクの布素材は、高級マニラ麻の和紙糸を50%使用。天然素材で肌に優しく、蒸れにくく、抗菌、消臭効果、UVカット機能があり、洗濯機で洗え、繰り返し使えるという。布色は淡い青や紫で、顔回りが明るく見える。
〈写真:能登ブルーベリーマスクを手に平さん〉
【山形支局】新庄市のグループ「新庄菜々彩ベジ多〈しんじょうなないろべじた〉(代表=柿﨑史子さん、会員6人)」は、自家栽培の野菜を使用したドレッシングを製造し、同市ふるさと納税の返礼品のほか、市内の産直施設やイベント出店などで販売している。グループ名は、さまざまな野菜の色鮮やかなドレッシングで食卓に彩りを添えたいという思いから付けられた。メンバーが栽培する野菜を持ち寄り、3年前に販売を開始。現在は2種類のトウガラシをブレンドした青とうがらしのほか、こがし玉ねぎ、黒豆きなこ、えだまめ、かぼちゃ、紫いも、ねぎ塩、とまと、にんじんの9種を販売する。「サラダはもちろん、パンや温野菜、肉料理などいろいろな料理に合う」と柿﨑さん。現在は、新たに柿やブルーベリーなどを使用した商品の開発を進めている。
〈写真:自家産野菜を使用した9種類の無添加ドレッシング〉
【福井支局】福井市高屋町の「株式会社農園たや」の代表取締役・田谷徹さん(47)は、ハウス1.6ヘクタール、露地1ヘクタールで約50品目の野菜を生産し、東日本大震災以降、野菜を詰め合わせた「野菜おまかせ便」を全国に届けている。今年4月からは野菜おまかせ便の品書きを歳時記風にリニューアルし、野菜を季語として紹介した。俳句例も紹介し、インターネットの「Googleフォーム」に投稿すれば、例句として紹介されるという。俳句を通じて交流会を開くほか、初心者でも取り組めるように、農園のスタッフが講師を務める俳句教室をWeb会議サービス「Zoom」で月1回開いている。講座や交流会の参加費は無料だ。レシピを通じた交流も始まった。野菜を購入した人が会員制交流サイト「Twitter」に投稿したレシピをまとめ、「クックパッド・農園たやのキッチン」に約160点が掲載されている。
〈写真:歳時記風の品書きを手に田谷さん。ルッコラなど季語になっていない野菜は新季語候補としている〉
▼サーモンは、すしネタで1、2位を争う人気だという。子どもの頃、すしは祝い事でもなければ食べられなかったが、サーモンを食べた記憶はない。すしネタに使われたのは、15、6年くらい前からだそうで、急速に人気ネタに上り詰めたと言える。
▼サーモンをすしネタに売り込んだのはノルウェーの輸出商社と聞いた。天然・国産志向が根強い中、養殖・輸入のサーモンは、最初はすし屋に行っても門前払いだったそう。安価でおいしいネタを探していた回転ずし屋に採用されたのを機に人気が出た。当時はサーモンがすしと言えるか議論もあった。今や高級すし屋でも定番のネタになりつつある。
▼驚くのは、国内で流通するサケと市場のすみ分けができていることだ。サーモン独特の色合いと味が定着したため、現在のところ、すしネタなどにサケが参入する余地がない。日ごろは食材は国産優先で購入するようにしているが、サーモンは代替できない。
▼考えてみると料理の世界は柔軟だ。すしは米国に渡って、アボカドやマヨネーズを使ったカリフォルニアロールになった。逆の例では、中華の麺料理が日本で独自に発展し、国民食の一つであるラーメンになった。政府は、農林水産物・食品の輸出促進で、日本食の普及にも取り組む。しかし、海外の料理にマッチする日本の食材があるかも知れぬと思った次第。