今週のヘッドライン: 2021年06月 2週号
埼玉県深谷市では、農業を核とした産業振興を掲げ、ベンチャー企業などを積極的に誘致している。福岡県に拠点を置くグリーンラボ株式会社は、会員制で野菜の養液栽培を体験・研修できる施設「ワン・ファーム深谷ワークス」をオープンした。無線インターネット環境などオフィス機能を併せ持ち、会社から離れた場所で働くリモートワークによって余暇が生まれた会社員などに向けて、副業などでの参入促進・育成を図る。
政府の規制改革推進会議は1日、菅義偉首相に答申した。農業分野では、農協などにおける独占禁止法に違反する行為への対応や農業者の成長段階に応じた資金調達の円滑化など11項目を盛り込んだ。牛乳・乳製品の生産・流通に関する規制改革では、指定生乳生産者団体(指定団体)による実質的な独占が継続されていると指摘。生乳取引の全国実態調査を行い、必要な措置を講じるよう農林水産省に求めた。資金調達の円滑化では、企業の農地取得につながる農地所有適格法人の議決権要件の緩和などは先送りしたものの、一定期間地域に溶け込み、実績を残した法人に対して「出資による資金調達が柔軟に行える」措置の検討を提起した。政府は、答申に基づき規制改革実施計画を策定し、月内にも閣議決定する。
Jミルクは5月28日、2021年度の生乳と牛乳乳製品の需給見通しを発表。生乳生産量は、北海道では前年度比102.1%の424万7千トン、都府県では同100.1%の327万7千トンと見通した。全国は同101.2%の752万4千トンで、3年連続の増産となる。
生乳需給は緩和傾向で推移すると見込んだ。新型コロナウイルスの影響が継続し、家庭内需要も落ち着いているため。ただし、都府県では夏期にひっ迫傾向が強まる可能性があり、9月の飲用最需要期には、北海道から同100.8%の6万5千トンの移入が必要となる見込み。
農繁期になると、領収書の管理にまで手が回らなくなり、ため込んで確定申告時期に苦労することも。税知識を4こま漫画で分かりやすく紹介する黒川税理士事務所(千葉市)の黒川豊税理士に、領収書の管理や保管のポイントを紹介してもらう。
ホウレンソウの夏作では、播種期から収穫前まで発生して枯死させる萎凋〈いちょう〉病対策が重要。農研機構・西日本農業研究センターは、7月中下旬播種、8月中下旬出荷となるホウレンソウで、事前に栽培したカラシナをすき込む生物的土壌燻蒸〈くんじょう〉と土壌還元消毒を組み合わせた土壌消毒技術を開発した。未実施の場合と比べ、発生を10分の1ほどに抑えられる。薬剤を用いないので、農薬の削減にもつながる。十分な水分量の確保と3~4週間のビニール被覆などがポイントだ。
6月20日は父の日。日頃の感謝の気持ちを込めて、父親に手作りの寄せ植えを贈りませんか。富山県南砺市の花き農家「フラワーンダフル千華園」の石村修子さんに、寄せ植えの作り方を紹介してもらう。
【岡山支局】真庭市蒜山でトマトを栽培する上田陸さん(24)は2018年4月に就農した。今年3月には2.5アールのビニールハウス2棟を新設し、「桃太郎」系のトマト「桃太郎セレクト」「桃太郎サニー」「桃太郎8」の栽培に挑戦する。今後も規模を徐々に拡大する予定だ。山間部の蒜山は雪深い土地のため、強風や雪害への備えと対策が必須だ。今は支柱を立てての雪対策、防風ネットを活用した強風対策を施す。何かあったときの助けになるものが必要と考え、就農後すぐに園芸施設共済に加入。現在は収入保険とセットで加入している。「就農してからは被害はなく、共済金を受け取ったことはありません。でも、保険に加入しているという安心感があるからこそ、一歩踏み出してみようという気持ちになれます」
〈写真:新設したビニールハウス内で定植準備に励む上田さん〉
【香川支局】かんきつ類を1ヘクタール栽培する高松市の河野光明さん(76)に、園芸施設共済に加入した理由などを聞いた。
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市場で人気の「はるみ」(12アール)は寒さに弱く、冬はハウスで霜よけをしないと傷んでしまいます。園芸施設共済には、NOSAI職員の強い勧めもあって、今年4月に加入しました。加入以前も職員からの勧めはありましたが、そのときは制度にあまり魅力が感じられませんでした。私のハウスのような、経過年数が10年以上の施設は十分な補償を受けられない内容だったからです。しかし、昨年9月に改正された制度では、特約を付けることで、ハウスが全損したとき最大で100%の補償を受けられるようになったと聞き、魅力を感じました。最近は災害が多発していて、何が起こるか分かりません。もし何かあったときのためのお守りと思って加入を決めました。1万円の損害から補償の対象になる特約は、思ったより安い掛金だったので、付けることにしました。これで大小さまざまな被害に備えることができます。加入の決め手になった昨年の改正のように、少しずつ制度が良くなっていて、入りやすい保険になっていると思います。
〈写真:父の後を継ぎ本格的に農業を始めて30年ほどになるという河野さん〉
【千葉支局】旭市で黒毛和種雌牛8頭と子牛10頭(うち繁殖素牛6頭)を飼養する村田一馬さん(42)は、今年4月に離農した農家の牛舎を買い取り、村田牧場を始めた。新規就農で和牛繁殖農家になるには、情報収集と牧場で経験を積むことが大切だと考えた村田さん。勤めていたJA全農を退職し、酪農牧場や繁殖・肥育一貫牧場で6年間働きながら、飼養管理と繁殖技術、重機の操作などを習得した。これと並行して、離農した農家の牛舎の情報を各方面から集め、条件の良い物件を探していた。新規就農に当たっては市の新規就農者支援事業を利用する予定だ。現在、牧場にいる牛は、以前勤めていた牧場で場所を借りて飼い始め、移動させた。
〈写真:育成牛に給餌する村田さん「将来は繁殖雌牛を30頭まで増やしていきたい」〉
【大分支局】「私たちが地域農業を守りながら、次の世代に引き継いでいきたい」と話すのは、豊後大野市の農事組合法人グリーン法人中野で代表理事を務める和田梢さん(38)。和田さんを含めた理事3人と従業員1人で、米6ヘクタール、麦5ヘクタール、サトイモやスイートコーンの栽培と販売のほか、ライスセンターを運営し、地域の農作業を受託する。高齢化が進み耕作放棄地が年々増える同市中野地区の状況を憂いた和田さんの義父たちが、地域の農地を守り不耕作地の増加に歯止めをかけようと、2005年に同法人を設立した。和田さんは「代表だった義父が14年に他界したことで、法人の運営状況が悪化しました。将来の地域の担い手である私たちが、義父たちが守ってきた農地を存続させていこうと決意し、代表理事に就任して法人の運営を引き継ぎました」と振り返る。
〈写真:「地域農業を次の世代に引き継いでいきたい」と和田さん。米袋にはグリーン法人中野のオリジナルロゴが印字されている〉
▼今年は九州から東海にかけて平年比で20日前後早い梅雨入りとなった。九州をはじめとした西日本は、梅雨前線の影響で5月の降水量が例年に比べ多くなっている。平年であればこの6月初旬からが本格的な梅雨時期だ。局地的な豪雨や河川の増水などで被害に遭わないよう十分に警戒したい。
▼農林水産省は、毎年100件ほどの転落事故が発生する農業用用排水路の安全対策を呼びかけている。年間で70~80人が亡くなり、その7割は60代以上が占めるという。特に5~7月は事故件数が多い時期だ。
▼水路は、柵がない場所が多く、自転車の転落などが発生しやすい。柵があっても隙間から子どもが落下する事故があるそうだ。まず、地域内の危険箇所を把握し、地域住民で情報を共有するところから始める。
▼可能なら、新たな柵の設置や既存の柵の補修などをしておきたい。ただ、雨が降りだしたら、安全な場所で過ごし、気になっても近づかないことだ。水路は壊れても直せるが、命は元に戻せないと肝に銘じておこう。