今週のヘッドライン: 2021年04月 4週号
「播種時期を早くして、収穫量を増やす作型を導入できた。初めは障害果が多く、まさに挑戦だった」と話すのは、宮城県大崎市鹿島台でトマトなどを栽培する有限会社「マルセンファーム」の千葉卓也代表(47)。環境制御システムを活用し、水分を最低限に抑えてゆっくり育てる節水栽培農法で、高いときには、糖度10以上の高糖度トマトを生産する。作型を改良して収穫量を増やすなど、日々挑戦を続けている。2019年10月には、台風19号により、ハウスが最大で3メートルほど冠水するなど大きな被害を受けたが、収入保険で経営を継続した。
農林水産省は14日、津市の養豚場で豚熱の患畜が確認されたと発表した。約1万頭を飼養する大規模農場で、30日までの防疫措置終了に向け、殺処分は24日までに終える見通し。ワクチン接種推奨地域が拡大する中で、ワクチン接種農場での感染事例が増えている。同省は、ワクチンによる免疫付与率が80%であり、接種農場でも野生動物の侵入防止策や洗浄・消毒など飼養衛生管理の徹底を呼び掛けている。養豚関係者らによる連携を強化し、豚熱の感染拡大を食い止めたい。
総務省消防庁は13日、消防団員の出動に応じた報酬制度の創設や報酬基準の策定、団員個人への直接支給の徹底など処遇改善策を盛り込んだ有識者検討会の中間報告書を公表。同日、都道府県知事などに報告書を踏まえた処遇改善を求める通知を発出した。2021年度中に条例改正など必要な手続きを進め、22年度からの施行を求めている。
NOSAI広島(広島県農業共済組合)では、自然災害や病虫害への備えを促し、地域農業の維持・継続に力を注ぐ共済委員(NOSAI部長)が活躍している。普段からの対話を重視し、組合員と情報を共有。全国で災害が頻発する状況から「NOSAIの役割は、ますます重要になる」と口をそろえる。
消費者の健康志向の高まりを受け、もち麦(もち性大麦)の需要が拡大している。生活習慣病の予防・改善効果が報告されている食物繊維「β-グルカン」を豊富に含み、もちもちとした食感も人気だ。多収で耐病性を持つ品種開発が進み、国内生産は急拡大しているものの、自給率は35%にとどまる。先ごろ開かれたもち麦サミットでは、実需者から大ロットでの品質の均一化や、機能性を一層高めた新品種の開発などを期待する声が上がった。
ゴーヤーやアサガオなどつる性植物をネットなどに茂らせて日差しを遮り、暑い夏を快適に過ごせる緑のカーテン。設置場所は自宅の軒先のほか、牛舎の日よけとしても最適だ。5月ごろに苗を植えると、夏には立派な緑のカーテンに仕上がる。作曲家でNPO法人緑のカーテン応援団講師の石川るり子さんに、その効果や作り方のポイントを紹介してもらう。
東京都農林総合研究センターはこのほど、2020年度研究成果を発表した。主な成果の中から「トウモロコシ二期作を導入した飼料作物の増産」と「天敵製剤を利用した露地ナシのハダニ類の防除」の概要を紹介する。
【山梨支局】「イノシシやサルに野菜が食われたのをきっかけに猟を始めた。シカが増えたのは最近10年くらいかな」と話す三浦寿夫さん(80)。富士河口湖町河口地区で、60年以上にわたり農業経営に取り組む傍ら、農閑期はわな猟で害獣を捕獲する。昨シーズンは70頭ほどのシカを捕獲した猟師歴60年のベテランハンターだ。
〈写真:自作の杭を手に三浦さん。引っ掛かりやすく、多少引きずられても地面に跡が残るため追跡ができる〉
【鹿児島支局】「安心して楽しく食べられる野菜を届けたい」と話す曽於市大隅町の福永洋子さん(69)。消費者の声に寄り添いながら、「思いやりや気配り」を大事に、農薬に頼らず、少量多品目の野菜を手掛けている。福永さんは認定看護管理者や看護教員として長年勤め、命の大切さを指導する中で、食育や食の安全性に関心を持ったという。「思いやりや気配り、感謝の気持ちなど、教育と野菜作りには共通するものがある」と、2015年の定年退職を機に就農を決意した。西洋野菜やエディブルフラワー、ハーブなど食卓に彩りを添えることのできる珍しい野菜を、露地とハウス合わせて35アールで年間200種類以上を栽培。ダイコンだけでも「黒丸大根」「紅芯大根」など6品種を扱う。味や形、色の違う旬の野菜を常時40種類以上提供できるのが強みだ。
〈写真:からし菜を手に「楽しく食べられる野菜を多くの人に届けたい」と福永さん〉
【大分支局】水稲35ヘクタールをはじめ大豆5ヘクタール、麦56ヘクタール、ハウスイチゴ1ヘクタールを経営している有限会社中原農場(中原穣治代表=74歳、中津市三光)の中原洋佳さん(40)は、麦の追肥の省力化を図るためブームスプレヤーを改良し、作業に役立てている。ブームスプレヤーの前方に電動施肥機を取り付けた。フレームや各接続部を補強し、400キロの肥料を載せられるボックスを設置している。散布量をはじめ、肥料の追加、施肥機の調節など、機械に乗りながら1人ですべての作業が可能だという。
〈写真:ブームスプレヤーを改良し省力化を実現した中原さん〉
【富山支局】射水市の農事組合法人下条営農組合(浅井満組合長)では、水稲生産を省力化するため、「コシヒカリ」の作付面積の8割以上に乾田直播栽培を取り入れている。そして今年は、特殊な農薬を播種前の種もみに直接コーティングし、いもち病と紋枯病を防除する処理を県内で初めて導入した。導入した薬剤は、「バイエルクロップサイエンス株式会社」の「エバーゴルシードFS」と「ルーチンシードFS」。防除方法の特徴は、種もみの段階で対処するため、短時間で簡便な薬剤処理が可能で、効果のむらが出にくくなるという。また、本田への薬剤防除と比較すると、農閑期に薬剤処理できることから、忙しい春先の作業を軽減し、作業の分散化を図ることができるなどメリットが多い。
〈写真:下条営農組合の轟周一さんは「農閑期に作業ができ、忙しい時期の作業負担を軽減できるのが良い」と話す〉
▼津波や洪水、火山災害、土砂災害など多くの犠牲者を出した災害のあらましや教訓を伝える石碑などのモニュメントが各地にある。国土地理院は、地図・測量分野から災害教訓の伝承に貢献するとし、自然災害伝承碑の地図記号を制定し、同院の地図上で情報提供している。
▼今年3月に追加した分も含め、現在は47都道府県267市区町村の898基を掲載。地図でアルファベットの「T」と「U」を重ねて逆さにしたような記号をクリックすると、碑名と災害名、災害種別、建立年、所在地と伝承内容が画像とともに表れる。津波や高潮の碑が沿岸部に多いのは当然だが、洪水や地震、火山など内陸部も多い。
▼試しに故郷周辺を見ると、小学生のころに起きた土石流のほか、1945年3月の雪泥流の碑があった。20戸余りが流され88人が亡くなったという。知らなかった災害だ。建立年が古いほど、文字が不鮮明で欠損する例もあり、こうした情報公開は参考になる。先人が残した碑を探し、災害の教訓を胸に刻みたい。