今週のヘッドライン: 2021年02月 3週号
「ウンカが脱皮した皮が用水路に大量にあり、おかしいと思った。稲は根元が弱く、穂が充実していなかった」と話すのは、山口県宇部市小野で水稲約20ヘクタールを栽培する農事組合法人「市小野」の原田靖司代表(68)。2020年産の水稲は西日本を中心にトビイロウンカなどの被害が発生し、山口県では作況指数73と大不作になった。同県下関市吉見の農事組合法人「吉見ファーム」もウンカなどの被害で平年より8割減収したが、水稲共済金で経営を継続できた。
3月1日から「春の農作業安全確認運動」が始まるのを前に農林水産省は17日、春の農作業安全確認運動推進会議を開催。乗用型農機でのシートベルト・ヘルメットの着用徹底など重点推進テーマを確認した。農業では毎年300件近い農作業死亡事故が発生しており、2019年の農作業事故死亡者数は281人と前年比で7人増加。65歳以上の高齢者が占める割合は、88.3%と調査開始以来最高になった。就業人口10万人当たりの死亡者数も増加傾向にあり、同年は16.7人と過去最高を記録した(17年と同率)。高齢者の事故防止など地域を挙げた農作業安全の取り組み強化は待ったなしの状況だ。
農林水産省は16日、都道府県知事に対し「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」などを活用し、国庫補助に上乗せする独自の収入保険の保険料等補助を検討するよう通知した。また、管内の市町村に同様の措置の検討を働き掛けるよう依頼した。
NOSAI熊本(熊本県農業共済組合)では、地域の将来を見据え、農地を守り、農業の継続に尽力する共済部長(NOSAI部長)が活躍している。頻発する災害やコロナ禍での収入減少に対応するため、収入保険に加入。対話を重視しながら備えの大切さを地域に浸透させる共済部長2人を取材した。
親子3人で主食用米25ヘクタールを栽培する福島県泉崎村の「きのうちライスファーム」では、播種密度を増やして苗箱数を削減する「密苗」を全面積で導入し、春作業の省力化につなげている。苗箱数は従来の2分の1程度に減らしつつ、病害などのリスク回避として面積に対して1割ほど多めに用意できている。代かきと同時進行で1日2~3ヘクタールを植え付ける。代表の木野内悟さん(49)は「年々、経営規模が大きくなっている中で、効果に実感がわいている」と話す。
【岡山支局】岡山市南区の「あおぞら農園」で、水稲・キャベツ・ブドウなど約10ヘクタール栽培する土井康平さん(27)は、新規就農時から事業拡大に意欲的に取り組む。「新しいことにどんどん挑戦して、良いものを作りたい」と土井さん。LED(発光ダイオード)光源を利用した植物工場や、ソーラーシェアリングを岡山市で初めて設置するなど、新技術の導入に積極的だ。さらに、自家製ワインの醸造を目指そうと、赤ワイン用のブドウを新たに3ヘクタール作付けている。
〈写真説明:最新の大型農機具を導入し、効率的な農業を目指す土井さん〉
【京都支局】傾斜地での草刈りを滑らずに作業できる履物を開発した京丹波町の乾光男さん。「すべらず君」で商標登録申請中で、販売に踏み切るという。長年使っていた履物が専門家の目に留まり、意匠登録を目指すことになった。弁理士に相談しながら手続きを進め、一昨年5月に特許庁に出願し、昨年1月に認可された。材質を鉄からアルミに改良して軽量化を実現している。形状に工夫を加え、強度検査が公認され、今年1月に3回目の登録となった。乾さんは「約45度の傾斜を想定している。急な斜面でも滑らないので作業が安全になり、楽で早い」と話す。
〈写真:「すべらず君」。石が多い場所では付属の専用ゴムを取り付けて使う〉
【熊本支局】水俣市の滝下幸伸さん(68)は、自ら発案したマンゴーの超低樹高栽培で成果を上げている。「沖縄県でも研修を受けましたが、マンゴーは花が付きにくく、隔年結果になりやすい。普通の栽培方法だと結果数が少なくなります」と滝下さん。枝数を増やし、結果数の増加につながる方法はないかと考え、一般的な低樹高栽培よりもさらに樹高が低い超低樹高栽培にたどり着いた。「マンゴーはミカン作りの経験を生かして、枝を横にはわせて育てます。普通の栽培方法の倍ぐらいの結果数で、収益が上がりました。危険を伴う脚立を使う作業も減らすこともできました」。授粉も工夫した。「活動場所が違うミツバチなどを使うと、授粉しやすくなります。施設内の温度管理も重要で、夜間は24度から25度、昼間は30度を保っています」
〈写真:上と下からひもで引っ張り低樹高を実現〉
【広島支局】広島市安佐南区長楽寺の笹木功士〈こうし〉さん(33歳、野菜28アール)は、伝統野菜「笹木三月子〈ささきさんがつこ〉大根」の栽培に力を注いでいる。祖父の故・憲治さんが生み出した品種で、祖母のフジ子さん(86)が毎年栽培し、種子を守り続けてきた。笹木三月子大根は、丸くて甘い「聖護院大根」と、春先まで収穫できる「三月子大根」を交配した品種。憲治さんは、出荷が減る2、3月においしいダイコンを生産したいと、14年かけて改良し、1980年に種苗登録にこぎつけた。水分が少ないため割れやすく、栽培は難しいという。一時は生産者が減ったが、2000年に地元の朝市の目玉商品として取り上げられて以降、近隣の地区で再び栽培が広がった。
〈写真:しっかりした肉質と甘味の強さが特長の笹木三月子大根〉
【石川支局】「カラー野菜は栄養価が高く、味もいい。認知度を上げて、たくさんの人に味わってもらいたい」と話す中能登町芹川の青木靖〈あおき・まもる〉さん(46歳、水稲8ヘクタール、野菜1ヘクタール)。同町はカラー野菜の特産化に力を入れている。青木さんもその魅力をPRしたいと、カリフラワーや赤ネギなど約30種類を生産。通年で道の駅「織姫の里なかのと」へ出荷する。冬季は地元客に人気がある赤ダイコンの「能登むすめ」を10アール栽培し、約1千本を出荷。能登むすめは、皮がほんのり紫がかり、丸々としている。切っても紫色で、アントシアニンの含有量が白ダイコンの約3倍と豊富だ。
〈写真:「酢漬けにすると鮮やかなピンク色になる。見た目も楽しんでほしい」と青木さん〉
▼寝しなの時間を襲った福島県沖を震源とする地震は、東京でも揺れる時間を長く感じ、寝床を出るかどうか迷った。ニュースで宮城・福島の一部地域で最大震度6強と知り驚いたが、まもなく発災から10年となる東日本大震災の余震と聞いてさらに驚いた。
▼気象庁のホームページで調べると、大地震の後、震源近くの不安定な状態を解消しようと発生するのが余震だ。多くは、大きく揺れた本震後は規模の小さい余震となり、時間経過とともに発生頻度は減っていく。ただ、より大きな地震が起きて本震とされる例もあり、活動が収まるまで判別はできないそうだ。
▼また、1995年に発生した兵庫県南部地震の余震活動は20年以上を経ても続き、2カ月に1度ほど震度1以上の余震が発生したという。特に三陸沖は、同規模の地震が起きやすい場所とされ、もう10年たつからと人間が勝手に気を抜いてはいけないのだ。
▼地球の年齢は46億年とされ、登場したばかりの人類に簡単に解き明かせるものではない。それでも経験と研究を積み重ねていけば、大地震による甚大な被害を抑制できると信じている。