今週のヘッドライン: 2020年10月 1週号
水田60ヘクタールで経営する石川県志賀町の株式会社ゆめうららは、石川県農林総合研究センターの実証に協力。作業機を装着できる「農業ブルドーザー」を使い、湿田にも対応する新たな水稲の乾田直播体系を確立した。深耕や均平の性能が高く、機体の重量で鎮圧の効果もあるため、冬季代かきを省略。銘柄米「ひゃくまん穀」の10アール当たり収量は、導入前より150キロ増の550~600キロを実現した。傾斜均平による転作での排水対策や、畦畔〈けいはん〉除去による大区画化など簡易な農地改良にも利用する。代表の裏貴大さん(34)は「水田の価値を高め、将来へつなげられる」と期待をかける。
農林水産省は16日、2021年産主食用米の適正生産量を679万トンに設定した。700万トンを割り込むのは初。9月15日現在の予想収穫量735万トンを基に、21年6月末民間在庫量を196万~201万トンにする水準として算定した。需給均衡と米価の維持には、水田10万ヘクタール分に相当する作付け削減が必要。各産地には、主食用米以外への取り組み強化が必須となっている。一方で、飼料用米などへの転換には、農家手取りの確保などの課題が指摘されており、米政策の見直しと十分な予算の確保が求められる。
財務省は19日、財政制度等審議会の歳出改革部会を開き、農林水産分野では、(1)大規模経営体の生産性・収益性向上(2)サプライチェーン(調達・供給網)全体の生産性向上(3)中山間地域の農地管理の在り方――を協議した。飼料用米などを対象とした水田活用の直接支払交付金については、水田の約24%を占める転作作付けの大半は収益性が低い作物で、「大規模経営体の単位面積当たりの粗収益の増加を妨げている可能性がある」と指摘。経営能力を生かした輸出基盤に転換することが農産物・食品の輸出額5兆円目標の達成に向けて重要だとした。
政府は19日、規制改革推進会議の農林水産ワーキング・グループ(座長・佐久間総一郎日本製鉄顧問)を開き、当面の審議事項を決定した。農業者の所得向上を掲げた農協改革の着実な推進や担い手への農地利用の集積・集約化、農業委員会制度に関する検討などのほか、新たに「牛乳・乳製品の生産・流通等に関する規制改革のフォローアップ」も盛り込んだ。生産者が出荷先を自由に選べる制度見直しを実施したが、年度途中で出荷先を変更する"いいとこ取り"問題について必要な措置を検討する。
「地域の若手には園芸施設共済に必ず加入するよう伝えている。入っていれば安心して農業ができる」と話すのは、長崎県大村市沖田町で共済部長(NOSAI部長)を務める沖田盛葊さん(67)。新規就農者の研修やサポートを引き受け、農業保険加入の大切さなどを伝え、若手農家が安心して経営できるよう努めている。同県南島原市口之津町の共済部長、平光正さん(67)は、担当する組合員だけでなく、町内の認定農業者にも自然災害や農機具の事故の経験を伝えて推進。地域農業の安定に貢献する2人に話を聞いた。
野生鳥獣による農作物被害が後を絶たない。農林水産省によると、2018年度の全国の被害額は158億円。6年連続の減少となっているものの、依然として高い水準にある。14~16日、千葉市の幕張メッセで開かれた農業総合展「第10回農業Week」から、被害の防止につながる資材などを紹介する。
【熊本支局】「令和2年7月豪雨」で園芸施設が倒壊するなどの被害を受けた人吉市中神町大柿地区の大柿章治さん(75)。豪雨災害からの復興に向けて、自身の園芸施設の再建だけではなく、組合長を務める大柿営農生産組合構成員の力を結集して地域農業の再建を目指している。
〈写真:「再建して観光農園を始めたい」と意欲を示す大柿さん〉
【北海道支局】旭川市永山町の北海道旭川農業高等学校(田村弘樹校長)の農業科学科畑作班では、高齢農業者の作業負担を軽減する農業機械の製作に取り組み、除草作業の補助や荷物の運搬機能を搭載した「農業用アシストカート」を開発した。道具や材料は基本的に学校にあるもので製作。高価なものや作業が難しい部品は使用していない。操作はアクセルとブレーキだけで、高齢農業者でも簡単に操作できる仕様になっている。
〈写真:アシストカートの改良に取り組む畑作班の生徒〉