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防風林「新たな価値を生む裾野の広さ【2025年3月1週号】」

 ▼漫画雑誌の編集を経験後、小説家としてデビューし、芥川賞を受賞するなど活躍する方の自伝的小説を読んだ。その中で、漫画や小説の編集者について、「かつては売れる売れないを気にしない編集者が大勢いた。むしろ売れる本があるから売れない本を出版でき、それを自分の仕事と任じている人さえいた」といった記述があり、印象に残った。
 ▼現代は何事も効率や成果が重視される時代だ。出版業界も小説や漫画雑誌の売り上げ減が続いており、売れない本の出版など無駄と切り捨てられるだろう。ただ、裾野の広さや多種多様な存在は大切で、売れない作家や売れない分野の本も不要ではない。
 ▼子どもの頃、父親が園地の隅でリンゴの新品種を試作していた。果実は小ぶりで、中まで赤みが入り、シャキシャキした食感が好きだった。作り続けてほしいとお願いもしたが、数年後には伐採されてしまった。
 ▼最近になって、中まで赤いリンゴが市販化されたと知った。多様な性質の品種があったからこそ、生まれた新品種であろう。