▼気持ちを新たに新年を迎えたい。ただ、昨今の世界や日本をめぐる情勢には先行き不透明感が漂い、すっきりしない。ウクライナや中東の紛争は長期化し、終息が見通せない状況だ。そんな中、自国第一を掲げるトランプ氏が米国大統領に返り咲く。一方、欧州連合(EU)をけん引するドイツやフランスで政治的な混乱が続き、国際的な発言力の低下も懸念されている。
▼貿易や経済をめぐる交渉、地球温暖化対策など、国際社会は多国間の連携を強化する方向で調整を図ってきた。しかし、トランプ氏は、就任前から各国への関税引き上げを公言。温暖化対策を促す国連気候変動枠組み条約から再度の離脱を強行する恐れもある。
▼特に温室効果ガス排出量世界2位の米国が離脱すると、積み上げてきた温暖化対策が大きく後退する懸念もある。「地球沸騰化」との発言で高い水準の地球温暖化対策の必要性を訴えた国連のグテーレス事務総長は何を思うだろう。
▼ドイツやフランスの政治的な混乱の背景には、移民増大や物価上昇、温暖化対策の負担拡大への不満があり、米国民によるトランプ氏の選択にも移民問題や格差拡大があるとされている。格差拡大や生活苦など不満の高まりは日本も同様で、衆院選を経て30年ぶりの少数与党となった。国の基本的な責務は国民の食や生活の安全を保障することだ。暴力的な対立や分断をあおるネット上の情報に惑わされることなく、政策的な課題には熟議で解決を見いだす政治の実践を望みたい。