▼こうじ菌を使った伝統的な酒造りが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録される見通しとなった。日本の提案を審査した評価機関が「記載が適当である」と勧告した。対象は杜氏(とうじ)や蔵人などが各地の気候風土に合わせて造る日本酒や焼酎、泡盛などだ。左党を自認する者としてうれしく思う。
▼特に日本酒は、農業との縁も深い。酒蔵はよい米と水のある地域に立地して酒造用米を購入する。冬季の酒造りは農閑期の農家などが担ってきた。造り方も杜氏の出身地によって少しずつ異なり、経験を重ねて築いた技術が長年にわたり伝承されてきた。
▼近年は健康志向もあって国内の酒の消費量は減少の一途をたどる。ただ、各地の酒蔵が米の品種や削り方から造り方まで工夫を凝らし、多様な味わいを楽しめる時代となった。酒蔵見学と合わせた観光も盛んだ。
▼需要拡大は海外に目を向けたい。農林水産物・食品の輸出で、日本酒は10年で輸出額が3倍超増えた。酒造好適米品種は、栽培に手間はかかるが単価は高く、中山間地の水田維持にも貢献できるだろう。