▼日本の人口が減少に転じて以降、地方でも都市部でも放置された空き家が目立ってきたと感じている。総務省の調査では、2023年10月1日現在の空き家数は900万2千戸。5年に1度の調査で、前回(18年)比で51万3千戸増と過去最多になり、総住宅数に占める割合も13.8%と過去最高となった。
▼近所を散歩していても長期間放置された空き家を見かける。屋根は落ち、窓は割れ、壁は崩れ、繁茂した草木が道路側に飛び出し、通行の妨げになる場所もある。何とかできないかと思うが、個人資産であり、勝手に処分できないのだ。法改正で放置空き家の対策も強化が図られてはいるものの、現状では行政の対応も後手に回っている。
▼国土交通省は先ごろ、「『農地付き空き家』の手引き」改定版を公表した。空き家バンクなどに取り組む自治体に向けに、田園回帰など都市部の住民が持つ農山漁村への潜在的な移住への関心に応え、空き家の有効活用を呼びかけるものだ。移住を希望する人の多くが農地を希望する事例が多いとし、主要な手続きや先進的な事例、関連する制度と利用可能な事業などをまとめた。
▼手引きによると、空き家の取得要因は相続が半数以上を占め、所有者の4分の1は遠隔地に居住する。日常的な管理ができない空き家ほど早く朽ちる可能性がある。相続した生家をすぐに売ったり貸したりは決心しにくいだろう。ただ、魅力を感じて移住者が増えればそれだけ故郷のにぎやさが増す。そう考えてはどうか。