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極晩生温州ミカン「あおさん」/年明け出荷可能で良食味【和歌山県・10月2週号】

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 【和歌山支局】湯浅町の温州ミカン農家・湯川知明〈ゆかわともあき〉さん(45)が農園で発見した「興津早生」の一樹変異が、長年の調査を経て2024年3月に新品種「あおさん」として登録された。この品種は年明けの流通期間とその食味から高い評価を受けていて、24年春から、和歌山県内限定で苗木の流通が始まっている。
 湯川さんは200アールある農園にあった興津早生の一樹変異に興味を持ち、当時父から教わっていた接ぎ木の技術を用いて経過を観察。果樹試験場に情報提供するなどして、24年3月に新品種「あおさん」として登録された。
 この品種は、1月下旬~2月上旬収穫にもかかわらず、早生ミカンのようにじょうのう膜が薄く食味が良いことに加え、育成地によっては糖度15度以上になることもある。高温、多雨による浮皮や厳冬期の低温障害にも強い。樹姿は大きくならず、剪定〈せんてい〉作業も比較的容易に行え、隔年結果も少ないなどの特徴がある。
 あおさんの反響は大きく、県内外からの問い合わせも多いが、課題もある。鳥害と出荷量の安定化だ。
 通常、温州ミカンは年内収穫が多い。そのため、年明けに収穫するあおさんは周りに実がない状況のため鳥害に遭いやすい。
 さらに、栽培面積がまだ少なく、取引先への出荷量を安定させるのが難しい。24年の春からは県内限定で苗木の流通が開始され、栽培面積が広がり、安定供給につながることが期待されている。

〈写真:あおさんの木と湯川さん〉