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防風林「「やわやわと」進められる能登・白米4枚田の復旧・復興【2024年9月3週号】」

 ▼石川県輪島市の棚田「白米千枚田」で稲刈りが行われた。能登半島地震で約千枚ある田んぼのほとんどに亀裂や崩れ、田面がぼこぼこになるなど被害を受けた。被災後、管理する白米千枚田愛耕会や棚田オーナー、ボランティアなどが協力して棚田の修復に努め、田植えができたのは120枚ほど。それでも無事に出来秋を迎えられたことは喜ばしい。
 ▼棚田修復と営農再開を目指し、愛耕会はインターネットを介して資金を集めるクラウドファンディングを実施。千人を超える人が参加し、活動を支援した。少額の寄付にも丁寧なメールで定期的に活動報告があり、伴走するような気持ちで応援してきた。
 ▼来年の作付けに期待したいが、簡単ではなさそうだ。直近のメールで「『見えない被害』と向き合う日々」との報告があった。今年の作付けで田んぼの不均平や細かい亀裂からの水漏れが目立ち、作付けしない100枚ほどの田んぼに水を張って確認した。すると修復したはずの田んぼから水が漏れ、高低差で水が行き渡らないところも。
 ▼水を張って初めて分かる「見えない被害」の修復は、荒起こし後に水を入れ、荒くり(土と水をかきまぜ)、あぜ塗りし、泥で亀裂を埋める作業を繰り返すほかなく、相当な手間と時間がかかる。以前の報告で、「やわやわと」と能登の方言があり、「ゆっくり無理せず」の意味という。復興は、前のめりに急ぐと息切れして続かないから、慌てず騒がず丁寧に〝やわやわと〟やり続けるとあった。千枚田を造り、長く維持してきた地域の自信と誇りが感じられる。