▼実家では自分が小学生の頃まで飯米を自家生産していた。出来秋に待ち遠しいのが新米への切り替えだ。当時は収穫後の米の保存状態もよくなかったため、炊き上がりの白さや匂いなどの違いがはっきりと分かった。おいしさも格別で、最高で5杯食べたと記憶する。
▼今年も出来秋を迎えた。ただ、小売店から米が消え、新米の供給を待ちわびる異常事態となっている。近所のスーパーは、2週間ほど前から米の棚が空き始め、最近はのぞいても何もない状況が続いている。「1人1袋まで」と断り書きがあり、補充しても開店早々に売り切れていると推測される。
▼農林水産省は、6月末時点で150万トン超の民間在庫があり、需給ひっ迫の状況ではないと繰り返している。しかし、供給が滞っているのは確かで、早急に流通を促す必要がある。特に主食用米は、安定供給を図るために多額の予算も措置されている。状況改善を急がないと国民の不信感を招く。
▼品薄状態は(1)昨年の猛暑の影響による供給不足(2)パンや麺に比べ割安感があり消費が伸びた(3)インバウンド(訪日客)の増加で消費が伸びた――などが要因とされている。宮崎県の地震を機に、南海トラフ地震への警戒による備蓄需要も増えたようだ。割安感は、資材費の価格転嫁の遅れとも言えるが、米の消費減少に歯止めをかけ、拡大に転じる機会であることは間違いない。消費者に米を届けることが最優先課題だ。