【広島支局】広島市西区の古江、高須、田方の3地区で古くから栽培される「古江いちじく」は近年、農地の減少などで存続が危ぶまれている。高須地区の大下裕史さん(54)は、祖父母の代から続くイチジク農家を受け継ぎ、地区の歴史ある特産品を守る。
古江いちじくは「蓬莱柿〈ほうらいし〉」という品種で、古江地区では江戸時代末期から栽培されている。しかし宅地化が進み農地が減少。40年前は3地区で80戸ほどあった生産農家は、現在は23戸になった。大下さんは40代で早期退職し、2013年に就農。現在は7.9アールでイチジクを育てる。
完熟させて収穫するため日持ちしない。大下さんは「その日収穫した新鮮なものを、地域の人に味わってほしい」と、地元のスーパーや直売所に全量出荷する。
地元小学校の総合学習で、古江いちじくの歴史や栽培方法について説明するなど、次世代への継承にも努める。「話を聞きに来た児童から古江いちじくのことをもっと知りたいと感想をもらい、励みになる。昔から親しまれてきたブランドを守っていきたい」と意欲を見せる。
〈写真:「地域の人と協力しながら、栽培と継承活動を続けていきたい」と大下さん〉