▼家族で食卓を囲むことはなく、個々に好きなものを好きな時間に食べる。食や健康管理も含め互いの生活に干渉しないことを「個の尊重」と言う。食卓を定点観測の場とし、現代家族の実態と変容、背景事情を考察する岩村暢子氏の著書『ぼっちな食卓―限界家族と「個」の風景』(中央公論新社)を読み、家族の在り方を考えさせられた。
▼同書は、首都圏の240家庭を対象に1998年から2009年に実施した初回調査の10年後(89家庭)、20年後(8家庭)の追跡調査をまとめた。初回調査を紹介した以前の著書では、菓子パンだけの食卓など調理をしない家庭が多く驚いた。今回は、食卓を囲む行為自体を敬遠する家庭が増え、同じ食卓にいても孤食する実態が浮かぶ。
▼残念なのは、問題行動や不和状態が深刻化する家庭が増え、10年後調査で円満と判断できたのは7、8軒に1軒という少なさだ。岩村氏は、特殊な事例が集まった訳ではなく、社会の変化が家庭を変容させたと指摘する。
▼円満家庭には食卓を囲む共食の機会が多く、単身赴任や出張、交替制勤務など不規則な勤務が少ない点が共通するそうだ。「わが家は大丈夫」と言えますか。