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防風林「不満を募らせる欧州の農業者【2024年2月3週号】」

 ▼欧州各地でトラクターによるデモや港湾封鎖など農業者による抗議行動が活発化している。日本では、大きく報道されていないが、ドイツやフランス、イタリア、スペイン、オランダなどの国々にも騒ぎが拡大。卵を投げたり火を燃やしたりと過激な行動もみられた。調べてみると、ウクライナ情勢の影響による資材価格の高止まりや農畜産物価格の低迷、環境負荷を低減する農法などの支援重視へ農業政策の転換を図る欧州委員会への反発など共通する問題があるようだ。
 ▼欧州で農畜産物価格が低迷する背景に、ウクライナ支援の一環でウクライナ産農畜産物の輸入関税を免除した影響も指摘されている。安価な農畜産物の輸入が増え、各国の国産農畜産物の価格を引き下げているという。ウクライナ情勢が長期化するに伴い、経営への打撃が深刻化しているのだ。
 ▼環境負荷低減の施策に関しては、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定した際に、先行する欧米の施策を手本にした。欧州では、ディーゼル燃料の補助削減など政策転換へ動き出している。価格低迷に加え、政策転換に伴うコスト負担増が加わり、不満が爆発したのだ。
 ▼食料・農業・農村基本法改正案は、今通常国会に提出される。食料安全保障の確保を掲げ、生産基盤の強化を図ると同時に農業の環境負荷低減も推進するとした。生産者はコスト負担増に、消費者は食品価格の値上げに直面する中で、国民的な理解を得るためには適正な価格形成への道筋づくりが急務だろう。