【島根支局】出雲市大社町でブドウを栽培する高橋英治さん(50)と伊藤康浩さん(51)は、タッグを組んで独自の環境モニタリングシステムを開発した。高橋さんは2018年に島根にUターンして島根県立農林大学校で学び、ハウス4棟(50アール)で栽培。伊藤さんは観光ブドウ園などを2.7ヘクタール経営する。「前職でのプログラミング経験やロボットの『ペッパーくん』などに興味があったこともあり、農業セミナーでITやIoT(多様なものをインターネットで制御する仕組み)を活用したスマート農業の話を聞いたときに、チャレンジしたいと思いました」と高橋さん。ブドウハウス内に環境モニタリングシステムを作った。どこに居てもスマートフォンで情報を確認できるほか、情報を基に換気・灌水〈かんすい〉を自動化。システムは、超小型コンピューターや通信販売で買えるモーターなどを組み合わせた機械部分と、制御するソフトウェアでできており、すべて高橋さんが製作した。ここまで作り上げたシステムは、知識豊富な先輩農家の伊藤さんのアドバイスで今の形になったという。伊藤さんは、既製品で環境モニタリングや自動開閉を別々に運用していたが、高橋さんがスマート農業を始めたと聞き、開発初期段階からシステムの導入・改良に一緒に取り組む。「出雲の環境に合わせてシステムの改良点などを話し合い、すぐに対応してくれるので、日々いいものになっています。高橋さんのようなITの専門知識を持っている人が地元にいることは、すごい強みです」と伊藤さん。今後、人手不足が懸念される中で規模を拡大するには、IT・IoT化が不可欠だと考える伊藤さんは、3圃場でシステムを導入した。有効性を確認したことから、今年中には3圃場増やし、6圃場でシステムを運用するという。高橋さんは、環境モニタリングシステムのほか、売り上げや農薬などを管理するスマートフォン用アプリも作成した。今後は、ブドウの光合成促進と生理障害抑制での高品質・多収穫や再生可能エネルギーなどの活用、省力化のためのロボットなどを開発し、「出雲にスマート農業を広げていきたい」と二人は夢を膨らませている。
〈写真:災害に備え収入保険に加入する高橋さん(左)と伊藤さん。高品質・多収穫を目指してシステムを日々改良している〉