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キノコの発酵菌床を特許技術で製造 使用後は堆肥に活用【12月2週号 新潟県】

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 【新潟支局】新潟市中央区女池の「株式会社楽々〈らら〉」は、特許技術「マッシュファメンタシステム」でキノコの発酵菌床を製造・販売。この装置は一般的な菌床製造と異なり、オール電化であるほか、滅菌のための燃料を必要とせず、使用済みの菌床は堆肥として再利用が可能など、循環型農業モデルとして国内外から注目されている。同社代表取締役の駒場裕美CEO(最高経営責任者)は「異業種の仕事をしていたのですが、縁あってキノコの発酵菌床に取り組むことになりました。ノウハウがないところからの技術開発で、とても苦労しました」と話す。一般的な菌床製造では、攪拌〈かくはん〉、瓶・袋詰め、ボイラー(滅菌)、冷却、クリーンルーム(接種室)という工程や設備が必要だ。おがくずに米ぬかなどの栄養を混ぜ固めた培地を使用して栽培し、その後の菌床は廃棄処分することが多いという。同社のマッシュファメンタシステムは、原料を投入しておけば、IoT(多様なものをインターネットで制御する仕組み)技術による自動・遠隔制御で、完成予定時間に対し、攪拌、殺菌、発酵を一気通貫で実施し培地が完成する。原料は「コットンハル(綿実油の搾りかす)」と「ビートパルプ(テンサイ糖の搾りかす)」のほかは水、種菌だけで、農薬や添加物、栄養剤は一切使用しない。使用後の菌床は自然環境に約半年から1年置いて再発酵させ、完熟堆肥として野菜生産などの土作りに活用が可能。地球にやさしい循環型農業を実現した。「楽々の発酵菌床は菌の力だけで大きく育ちます。一般の菌床栽培に比べて、天然に近いおいしい味と食感が楽しめます」と駒場CEO。ヒラタケは20日、タモギダケは15日程度で培養が完了し、その後、1菌床で2~4キロ、3回程度の収穫が可能だ。菌の力が強いため、暑さや寒さに強く、キノコ栽培の特別な設備を増設しなくても生産が可能なので、既存のビニールハウスや農業施設などを有効利用し、農閑期の収入源としても活用できる。現在、ヒラタケ、タモギダケを中心に、ナメコやエノキダケを1ロット80菌床(1菌床6.5キロ)で販売。今後はさらに物流費の高騰がネックになるだろうという駒場CEOは「各地でマッシュファメンタシステムを導入してもらうことで、地産地消、持続的農業の一助になれば」と話す。

〈写真:発酵菌床で栽培したヒラタケ〉