ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

収入保険・私の選択  安定経営のための必要経費【11月2週号 北海道】

231102_8.jpg

 【北海道支局】大槻幸司さん(46)は「函館農業生産法人有限会社」の代表取締役、「農事組合法人函館つるの生産組合」では理事を務め、函館市で野菜などの栽培に取り組む。中でもブランド名「海の神」と名付けたアスパラガスが人気だ。さらなる安定した経営を目指し、収入保険と園芸施設共済に加入している。函館農業生産法人は、ニンジン、ブロッコリーなどを25ヘクタール栽培し、2023年4月に収入保険に加入。函館つるの生産組合は、ビニールハウス51棟でアスパラガスを153アール栽培し、22年12月に園芸施設共済に加入した。大槻さんは加入したきっかけを「野菜の栽培面積が多く、農業保険の加入は見送っていましたが、近年は極端な気象による収量減少や品質低下が増えたため、収入保険に加入しました。海沿いで雪が少ない地域ですが、大雪が降ることがあるので、もしもの備えで園芸施設共済に加入しました」と話す。大槻さんは、同社の会長で父・寅男さん(73)の指導の下、2年前から農作物の栽培管理を担当。「スーパーや市場への出荷が多く、安定供給のため余裕を持った栽培面積を心がけています。会長からも常々言われていますが、自分たちの世代が頑張って次世代にバトンをつなぎたいです」と意欲を見せる。アスパラガスを栽培するビニールハウスは15年前と比較し40棟増加した。海が近いため、函館市の名産の真コンブの根や魚介の残渣〈ざんさ〉を含んだ「昆布根加工肥料」を使用。ミネラル豊富な土壌で栽培し、2L以上の規格を満たしたアスパラガスを厳選し、海の神として出荷する。味の良さと品質の高さから有名百貨店で人気を呼んでいるという。「肥料にコンブを使用しているため、塩分濃度が高くなり過ぎて生育不良となった苦い経験から、土壌分析を毎年行っています」と、代々引き継がれるアスパラガスの栽培方法を守っている。「収入保険は安定経営のため、もしものときの"安心料"。必要経費と考え加入しました。販売収入の補償のため、現在の経費高騰による所得減少時の補償もあれば助かります」と大槻さん。「アスパラガスを冷凍加工して、販売期間を延ばしたいです。ロスを減らし、ほかの野菜も海の神のさらなるブランド化を目指していきたいです」と意気込む。

〈写真:「海の神」を手に大槻さん〉