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繁殖・肥育を拡充 畜産復興へ前進【11月1週号 福島県】

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 【福島支局】東日本大震災に伴う原発事故の影響で畜産農家が激減した葛尾村で、株式会社真〈まこと〉畜産(代表取締役・丹伊田拓真〈にいた・たくま〉さん=36歳、従業員3人)は、畜産業を復興させるため福島再生加速化交付金を活用し、繁殖・肥育一貫経営に奮闘している。震災以前、丹伊田さん方は祖父が肥育牛約300頭を飼養していたが、原発事故の影響で廃業せざるを得なくなった。丹伊田さんは畜産業に就く気はなかったが、運送会社で飼料を運搬するなど畜産関係者と関わるうちに、気持ちに変化があったという。「葛尾村の畜産を復興させたいという気持ちが次第に強まっていき、事業にチャレンジすることを決断した」。経営方針や戦略、資金計画など分からないことは、大規模牧場に勤務する弟に相談し、株式会社真畜産を2017年に設立した。設立当初、祖父が使用していた牛舎1棟と借りた1棟で繁殖和牛38頭を飼養。丹伊田さんは1人で牛を飼育するのが初めてだったため、父から飼養技術を学んだ。現在では、繁殖和牛80頭と預託肥育牛130頭を飼養する。近年の飼料高騰で配合飼料などの低コスト化に着手し、今年から牧草10ヘクタールを自家採取するとともに、面積を拡大する予定だ。今年、福島再生加速化交付金を活用し、同村が12月に新築する牛舎と堆肥舎、事務所、車庫、倉庫を借り受ける。葛尾村地域振興課の吉田将則さんは「震災で壊滅状態となった葛尾村の畜産業は、若い人たちの手で少しずつにぎわいを見せ始めている。今後が楽しみです」と話す。丹伊田さんは今後も頭数を増やし、24年までに繁殖用雌牛を180頭まで増やす計画だ。「将来は繁殖・肥育の一貫経営で500頭を目指したい」と意気込んでいる。

〈写真:「大きな事業になるので従業員を募集中です」と丹伊田さん〉