【山口支局】「自分で奪った命。余すことなく使いたい」と話すのは、下関市菊川町で食肉処理施設「鹿っちゃ」を経営する猟師の木原由紀恵さん(44)。シカやイノシシの狩猟、解体、加工、販売まで1人で取り組む。「自給自足の生活に興味があり、自家用の米や野菜は以前から栽培していました。『肉も自分で捕ってみたい』と思うようになり、看護師をしながら狩猟免許を取得しました」と木原さん。県外で看護師をしていた木原さんは、両親が高齢になり農業を続けるのが難しくなったため帰郷した。菊川猟友会に所属し、シカやイノシシの捕獲を始めた。「狩猟はけがと隣り合わせで、山で野生動物と遭遇する怖さもあります」と話す。「捕獲したシカやイノシシのほか、わなに入ったものも含め、年間100頭程度解体します。解体にかかる時間は、シカ1頭でおよそ20分。素早く解体することで、鮮度が保たれ、おいしい肉になります」。自ら解体する木原さんは「人が食べることのできる部分は、全体の10%しかありません。すべての部位を大切に利用していきたい」と話す。解体した肉は食用のほかペットフードとして加工、シカの角やイノシシの牙はアクセサリーにして販売。ペットフードの売れ行きは好調で、主力商品になっているという。木原さんは「ジビエ(野生鳥獣肉)料理を皆さんにもっと食べてほしいです。保健所の認可を受けた施設で衛生的に解体、加工しています。家庭で簡単に調理できるものに加工し、ジビエの良さを広めていきたいです」と話す。
〈写真:「苦手な人もいると思いますが、いただいた命ですので、解体も見ていただきたい」と木原さん〉