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耕作放棄地活用、獣害対策不要、低コスト エゴマで町を活性化【11月4週号 鳥取県】

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 【鳥取支局】町の面積の95%を森林が占める自然豊かな若桜町。同町にある有限会社若桜農林振興の小林正樹〈こばやし・まさき〉社長(62)は、年々増える耕作放棄地対策として、2019年からエゴマ、翌年からは水稲栽培に取り組む。町内で収穫したエゴマを全量買い取り、えごま油などを製造販売し、地域の活性化につなげている。同町は、40年ほど前までは特産品としてエゴマやタカキビなどの穀物を使った餅を生産するグループがあった。グループは解散したが、地元固有のエゴマの種は残っていた。エゴマ栽培が復活したのは13年前。地元農家の小林誠さんが中心となり、種を受け継ぎ試験的に栽培し、町外の搾油施設で搾油したところ、良質な油が生産できた。これを機に、同町の要請を受け、農林振興の事業として本格的な取り組みが始まった。現在は約1ヘクタールを栽培している。19年に加工施設「エゴマ工房」が開設されたことで、町内でエゴマの栽培から加工までが可能になった。収穫したエゴマは、低温圧搾したえごま油、実を焙煎〈ばいせん〉した「焙煎えごま」に加工。自社のホームページや、道の駅若桜などでの販売に加え、ふるさと納税の返礼品など地元産業の一翼を担う。しかし、同町は高齢化や過疎化の影響で新規就農者や農業後継者が不足し、耕作放棄地が増加している。エゴマは、獣害対策が不必要で、栽培にかかるコストが比較的少ないため、耕作放棄地の対策として優れているという。現在、同町内のエゴマ生産者は28戸、栽培面積は約4ヘクタール。エゴマ栽培に適した農地を確保し、生産規模を拡大していくことが鍵となる。小林社長は、今後は新商品を開発し、需要を高め、供給量を増やしていきたいという。「耕作放棄地を増やさないためにも、エゴマの生産から加工、そして販売をすることで町の活性化につなげていければ」と話す。

〈写真:エゴマの生育状況を確認する小林社長〉