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盛土式根圏制御で果樹栽培 軽労化などメリット発揮【11月3週号 山形県】

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 【山形支局】東根市神町の武田駿〈しゅん〉さん(32)は県内でいち早く果樹栽培に「盛土〈もりど〉式根圏制御栽培法」を取り入れている。地面に敷いた遮根シート上に盛り土して苗木を植え付け、樹〈き〉を地面から隔離し、少量の培地を用いて養水分を灌水〈かんすい〉装置から供給する栽培法だ。武田さんは2012年の春から、当時の県園芸試験場(現・県農業総合研究センター園芸農業研究所)の研修生として果樹栽培を1年間学び、翌13年に就農。このときに、従来の立ち木での栽培方法では、労働者の高齢化により脚立を使用した作業が難しいこと、樹の老化や紋羽病などが発生することなど、園地の課題が分かった。盛土式根圏制御栽培法は新聞で知ったという。栃木県へ視察研修に赴き、15年に同栽培法を取り入れた。現在は管理するサクランボ200アールのうち14アールと、洋ナシ「ラ・フランス」10アールで同栽培法を実践するとともに、樹高を抑え、脚立を使わずに収穫できる園地づくりを進めている。サクランボでは、10アール当たり苗木150本以上を定植。灌水設備を導入する必要があるため初期投資が多くなるデメリットはあるものの、従来の仕立て方と比較すると、約半分の年数で収穫が見込める短期成園化が可能だ。野ネズミ駆除のため除草剤を使用した草刈りの簡素化や、植え替えによる品種更新が容易になるなどメリットも多い。武田さんは「従来の仕立てより高品質で約1.5倍のサクランボが収穫できる」と手応えを感じている。直線状の作業動線を確保した見通しが良い園地のため、従業員に細かい指示を出しやすく、収穫作業の効率化が図れているという。今後はサクランボの根圏制御栽培法を確立させ、ジョイントⅤ字仕立てを導入するなどさらに軽労化を図りながら園地の拡大を目指す考えだ。

〈写真:脚立を使わずに収穫する従業員(写真提供=武田さん)〉