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ソフトグレインサイレージ稲栽培を委託 耕畜連携に活路【11月2週号 栃木県】

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 【栃木支局】芳賀町下高根沢の有限会社黒崎乳業は、地域の耕種農家にソフトグレインサイレージ(SGS)稲の栽培を依頼し、飼料自給率が向上した。飼料価格高騰による経営圧迫を抑え、地域農家にとっては経費削減の助けとなっている。黒崎浩〈くろさき・ひろし〉代表(61)は「畜産農家は輸入飼料に頼っている面が大きいが、SGSなら自給率を上げられ、一年を通して使用できる。耕種農家は普段のコンバインを使用し、運搬や荷受けの時間を短縮できる。圃場と生産現場が近いメリットを生かし、地域の後継者と一緒に地域農業をつないでいきたい」と話す。黒崎乳業では、乳用牛約200頭と繁殖和牛約20頭を飼養。地域農家にSGS稲120ヘクタールと発酵粗飼料(WCS)用稲30ヘクタールなど計約300ヘクタールを委託する。稲SGSとは、籾〈もみ〉付きの米を粉砕し加水した後に乳酸菌を加えたもの。密閉容器に入れ真空状態で約1~2カ月発酵を待つと給餌できる状態となる。畜産農家は飼料として使用することで餌代を削減。耕種農家は圃場から生産現場へ直接搬入できるため、乾燥調製による手間と経費の削減が期待できる。「飼料高騰が話題になる前に、他県でのSGS稲生産を酪農団体の職員に聞き、濃厚飼料も自分たちで生産できないかと思った」と黒崎代表。「密閉したままなら約12カ月持つ。空気に触れてしまうと注意が必要で、夏場では開封後2日を目安に使い切らないとカビ毒による牛への健康被害の恐れがある」と注意点を話す。耕作から生産は、2015年に設立した芳賀南高地区耕畜連携協議会の会員が担う。会員は当初8人だったが、現在は18人に増加した。協議会設立のきっかけは、耕種農家が生産する飼料用米の単位当たり収量を上げるため、稲わらと堆肥の交換を始めたことだ。21年にSGS稲の生産を67ヘクタールで開始。22年には世界情勢を踏まえ飼料の価格が上がると予想し、WCS用稲に加え、WCS用麦の栽培も開始した。会員が交代制で作業し、荷受けから梱包〈こんぽう〉まで重さや水分量などを記録しながら管理する。整理整頓された生産現場で丁寧な作業を心がけているため、不良品率は低く抑えられているという。黒崎代表は「SGSなどで飼料自給率を6割まで上げ、濃厚飼料の割合を3割削減できた。経費を削減でき、乳脂肪率が上がっている」と手応えをつかむ。現在は生乳を出荷する酪農とちぎ農業協同組合(宇都宮市)へも販売する。委託を受ける耕種農家は「乾燥調製の手間が省けコストの削減につながっている。荷受けの順番は品種や出来を見て決めている。品質も確保できている」と話す。

〈写真:「稲SGSはフレコンバッグ1袋が500キロになるが、力が要らないように工夫している」と黒崎代表〉