【岩手支局】シソ科の一年草「片面紫蘇〈しそ〉」は宮古市川井地区の特産品。同市川内の株式会社川井産業振興公社(桐田教男社長、以下=川井振興公社)は、片面紫蘇を加工する際に出る葉と茎の搾りかす(以下=残さ)を、肥料生産を手がける岩泉町の一般社団法人岩泉農業振興公社(中居健一理事長、以下=岩泉農業公社)へ無償提供。昨年からボカシ肥料の原料として利用する。片面紫蘇は葉の表面が緑色、裏面が鮮やかな赤紫色で、香りの良さが特徴だ。同地区では、20人の生産者が8.9ヘクタールで栽培し、今夏は130トンを収穫した。片面紫蘇を使った加工品を製造・販売する川井振興公社は、片面紫蘇を煮出して圧搾し、抽出した原液をジュースに加工。圧搾後の残さは雫石町の処理施設へ運んで廃棄処分していたため、運搬にかかる費用と時間が課題だった。肥料を生産する岩泉農業公社の杉山明弘さんは、植物性の原料を利用した新たな肥料の開発を検討する中で、片面紫蘇の残さに着目。川井振興公社から提供された残さを利用したボカシ肥料を考案した。5トンの残さを使い、昨年から生産に取り組む。残さに豚ぷん30トンや米ぬかなどを混ぜ合わせ、堆肥舎で約4カ月間熟成させる。豚尿を加えて水分量と温度を調整するほか、重機で切り返して空気に触れさせ、微生物による発酵を促す。生産したボカシ肥料は、リン、カリなどの成分のほか、微生物が作り出した酵素を多く含み、ジャガイモやトマトなどの栽培に適している。川井振興公社の佐々木孝加工部長は「残さを廃棄する費用と運搬の時間が節約された。廃棄処分していたものを有効利用する良い取り組みだと思う」と話す。杉山さんは「ボカシ肥料は化学肥料と比べて成長を促進させる効果に緩効性があり、土壌への負荷が少ないのが利点。今後も川井振興公社さんと協力して生産に取り組みたい」と意気込む。
〈写真:「9月の高温でボカシ肥料の発酵が順調に進んでいる」と杉山さん〉