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念願の牧場開業 国産羊肉を普及【10月1週号 秋田県】

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 【秋田支局】藤里町藤琴の宮野洋平さん(42)と妻の友美さん(38)は、群馬県渋川市から家族4人で同町に移住し、めん羊牧場を開業する夢を実現させた。国内流通量が約1%といわれる国産羊肉の普及に貢献したいとの思いで、食肉用羊の飼養に励む。宮野さん夫妻は群馬県の観光牧場でめん羊飼育に携わり、将来の独立を考えていた。洋平さんが同町の地域おこし協力隊に就任したことを機に、2021年3月に移住。同町では畜産振興として、1987年にめん羊飼育が始まっていた。「めん羊への理解が町にあることが決め手だった」と洋平さんは振り返る。町営牧場で飼育の補助をしながら開業準備を進め、2021年9月に粕毛地区で「宮の羊の牧場」を開業。新規就農した友美さんが代表を務め、洋平さんが牧場長として約360平方メートルの畜舎1棟と約5ヘクタールの放牧地で「テクセル」種や「サフォーク」種など120頭の繁殖と肥育を手がける。洋平さんは「双子以上を出産する多産傾向の母羊を80頭にして、肥育頭数を増やしたい」と話す。今年は20頭以上の出荷を予定。秋田県食肉流通公社で食肉処理後、首都圏や秋田市のほか、能代市の飲食店10店舗へ生後1年未満の肉を中心に卸す。友美さんは「テクセル種は肉の繊維が太く、しっかりした赤身で、サフォーク種は赤身と脂のバランスの良さが特徴。取引先に率直な感想を求めて、好まれる羊肉を作っていきたい」と意欲を見せる。地域おこし協力隊事業や移住後の取り組みに関わった同町役場総務課企画財政係の田中大樹主任は「宮野さんは開業への明確なビジョンを持っていた。藤里町に可能性を感じてくれた意義は大きい。この町に人を魅了する資源や文化があると再認識できた」と話す。開業して2年。地域イベントに積極的に参加し、羊肉コロッケやハンバーガーを販売し、国産羊肉の普及に努めている。地元農家との耕畜連携が始まり、将来はすべて秋田県産の飼料でめん羊を育て、羊肉料理を提供する飲食店経営の構想をがあるという。

〈写真:羊に餌を与える宮野さん夫妻。洋平さんは「流通が少ない国産羊肉を多くの人に届けられるよう、これからも二人で力を合わせて頑張っていきたい」と話す〉