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細心の管理、厳格な審査 水稲種子生産に注力【10月3週号 石川県】

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 【石川支局】「仕事は楽しんでやること。ちょっとでもおいしいものを食べたいという気持ちで頑張っています」と笑顔で話すのは、小松市の農事組合法人かすかみ(大間外茂吉代表)で理事を務める川﨑義光〈かわさき・よしみつ〉さん(78)。同法人では水稲種子の生産をメインに主食用米、麦、大豆、サトイモなどを約28ヘクタール栽培する。収益向上の取り組みとして6次産業化に力を入れ、地域農業の振興に尽力している。「小松市の中海地区では2002年に中海地区種子生産組合を設立し、水稲種子栽培を本格的に始めました」と川﨑さん。18年に同市原町・桂町が共同で農事組合法人かすかみを創立し、同地区の6.5割の生産を担っている。同法人では、種子用「コシヒカリ」や県のブランド米「ひゃくまん穀」など4品種を12ヘクタール作付け。生産には圃場審査に厳格な基準が設けられ、出穂期、登熟期、刈り取り前などに審査が実施される。川﨑さんは「見た目や大きさが重視され、品種が混ざってはいけません。良い種子を栽培するために気を使っています」と話す。産業用無人ヘリコプターによる防除は、もみを傷つける恐れがあり、動力噴霧機を使用。千倍に薄めた薬剤を2回散布する。深水管理にして雑草の繁茂を防ぐほか、あぜの部分は手作業で除草。異株がないか小まめにチェックし取り除く。葉の色を見極め、有機肥料を多く含む穂肥を適量施用することで倒伏に強い稲が育つという。農薬使用を減らした栽培を目指す同法人では、馬ふんや野菜くず、麦などを発酵させた堆肥を製造。10アール当たり8トン程度投入し地力増進を図っている。直売がメインの主食用米には、ミネラル含有量が多い土壌改良材を使用し、食味を向上させている。19年には法人の米と大豆を使ったみその製造を冬季に始めた。一般よりも米麹(こうじ)の割合が多く、昔ながらの製法で米の甘さが際立つ。「リピーターが多く手応えを感じます」と川﨑さん。今冬は2.5トンを販売する見込みだ。「これからも法人の役割である地域密着を貫きたい」と話す。

〈写真:たわわに実った稲を手に「今年の仕上がりも上々です」と川﨑さん〉