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リンゴ農家が狩猟+バーベキュー場【8月1週号 広島県】

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 【広島支局】庄原市比和町で「白根りんご農園」を営む白根浩治さん(40)は、妻の加奈さん(38)とリンゴを栽培する傍ら、猟師としても活動。今年5月には、ジビエ(野生鳥獣肉)を提供するバーベキュー場を開いた。浩治さんは「狩猟を通して、命をいただくことを教わった。一般の人たちのイノシシ肉の印象を変えたい」と話す。「最初はうちのリンゴ園を守るためだった」と浩治さん。果実を食べ、木を裂いてしまうイノシシの被害に、自ら立ち上がることを決意。浩治さんは2012年、加奈さんは15年に狩猟免許を取得した。自分たちで箱わなを設置し、地域の人から連絡があれば駆除に向かう。先輩猟師にノウハウを学ぶ中で、イノシシ肉のおいしさを知ったという。「臭い・硬いなどのマイナスイメージがあったけれど、新鮮な肉はまったく違った」と当時の感動を振り返る。地域の資源であるイノシシ肉を活用できないかと思っていたところ、同市是松町に「庄原市有害鳥獣処理施設」が完成。「捕獲して生きた状態の段階で施設に連絡すると、冷凍車が来てくれる。それから仕留めて血抜きをするので新鮮」と浩治さんは話す。新鮮な肉を食べてほしいという白根さん夫妻の思いと施設の考えが一致し、冷凍・冷蔵でのイノシシ肉の販売が始まった。同農園の直売所で販売するほか、贈答用としても発送する。白根さん夫妻は3ヘクタールの園地で33品種のリンゴを栽培し、9割を直売所で販売。「お客さんの声が直接聞けて、お客さんに育ててもらっている」と、消費者の声を受け、ジュースやジャムなどの種類は徐々に増えているという。イノシシ肉を販売するうちに、「近くで食べるところはないの」という声があり、バーベキュー場を開くことにした。「『思っていたイメージと違う。おいしい』と言ってもらえるのがうれしい」と浩治さん。「ここでおいしく食べてもらい、駆除することで田畑を守り、おいしい農作物ができる。このサイクルをもっともっと広げたい」と話す。

〈写真:自家産リンゴを使った焼き肉のタレを手に「イノシシ肉やジビエピザ、比和町のお米を食べに来て」と白根さん夫妻〉