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しょうゆの搾りかすを肥料に 高糖度・良食味「醤トマト」【7月4週号 香川県】

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 【香川支局】しょうゆ造りが盛んな小豆島では、昔ながらの木桶〈きおけ〉を使った製造方法を今に受け継ぐ。小豆島町の竹本和史さん(46)は、製造後に出る搾りかすを肥料にした「醤〈ひしお〉トマト」の栽培に2016年から取り組む。「うま味成分のアミノ酸数値は、同じ品種と比較して約3倍高いです。木桶仕込みのしょうゆかすならではの特長で、糖度が高くコクが増したトマトです」と竹本さん。産業廃棄物として処分されていた搾りかすを生かすことで付加価値を与え、地元のしょうゆ産業に貢献する。しょうゆの搾りかすは、大豆や小麦、塩が主成分。発酵過程で木桶に蓄積されてきた酵母菌や乳酸菌、タンパク質が分解されたアミノ酸を豊富に含む。アミノ酸は水溶性のため土によく溶け、トマトにも吸収されやすい。栽培するトマトの品種は加工しやすい中玉の「フルティカ」。定植は3月に始め、6月から8月にかけて収穫する。糖度は10度から12度で、市販品の約1.5倍だ。市場評価は高く、ほかのトマトと比べ高値で取引され、「もっと量がほしい」という要望があるという。ハウス10アールで年間2トンほど収穫し、ほとんどを東京の市場に出荷する。
 今年、醤トマトを栽培するメンバーに、新規就農した土庄町の鹿嶋大介さん(35)が加わり、竹本さんは指導に力が入る。鹿嶋さんは来年3月の定植からハウス15アールで栽培を開始。「小豆島でトマト栽培をしたいと思ったときに醤トマトを知りました。竹本さんから醤トマト栽培のノウハウを教わり、小豆島の魅力を発信できる農家を目指していきたい」と意気込む。竹本さんは当初、搾りかすの活用方法の模索から始めた。品目は、単価が高く収益が見込め、塩分に比較的強いトマトを選択。品種はいくつか試した。「始めて5年くらいは失敗が多く苦労しました。現在でも栽培技術の完成度は約7割程度です」と竹本さん。最大の弱みは塩分で、対策として、トマトを収穫した後は塩分を吸収するアイスプラントを植え付ける。小豆農業改良普及センターの清田隆治副主幹は「肥料のバランスや灌水〈かんすい〉量をうまくコントロールして栽培されています。フルーツトマトより皮が薄く、強い酸味はないので非常に食べやすく、味が良くてしっかりとしたうま味があります」と評価する。

〈写真:「醤トマトは高い糖度と豊かなうま味が特徴」と竹本さん〉