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ナシ栽培 国産花粉の安定供給へ 採取作業を大幅に省力化【7月3週号 鳥取県】

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 【鳥取支局】「花粉採取作業の省力化に向け、花粉採取に適した栽培管理の検討と花蕾〈からい〉採取機の開発を進めている」と話すのは、鳥取大学農学部の竹村圭弘〈たけむら・よしひろ〉准教授。技術開発を進め、「国産花粉の安定供給を求める各産地からの要望に応えたい」と話している。鳥取県で生産されるナシ「二十世紀」をはじめとする果樹類の多くは、人工授粉が必須だ。受粉に必要な花粉の調達は、高所作業での重労働となっている。近年は輸入花粉を利用する生産者が増加し、依存率は全国のナシの約30%。しかし、輸出国で病害が発生した場合、日本への供給は停止し、花粉量の不足と価格高騰が想定される。そのため、各産地から国産花粉の安定供給を求める要望が高まり、「花粉採取作業の省力化」と「花粉使用量削減」につながる技術開発が急務となった。花粉採取作業の省力化に向けた栽培管理は、ナシの花粉採取樹を低樹高ジョイント仕立てにして一斉採花すると、採取効率が棚栽培や立ち木栽培に比べ1.5倍以上向上したという。また、株式会社サンオーコミュニケーションズと連携して「手持ち式花蕾採取機」を開発。把持〈はじ〉棒の先端に小型モーターとブラシ状のゴムコードを取り付けた機械で、高速回転させたゴムコードを花そうに当て花蕾を落下させる。花蕾は、樹冠下に設置したブルーシートで回収。慣行の手摘み作業と比べ約7割の省力化に成功した。竹村准教授は「花粉の使用量削減のため、受粉機の開発にも積極的に取り組んでいる」と話す。その一つが「静電風圧式受粉機」。花粉に静電気を帯電させ、風圧で噴射することで花粉付着率が増加し、花粉使用量を削減できる。花粉付着数は慣行機と比べ約9倍になり、花粉使用量を慣行機より7~8割削減しても結実率は同等だという。

〈写真:資料を基に説明する竹村准教授〉