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適正管理を積み重ね高品質アスパラガス【7月1週号 山形県】

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 【山形支局】「就農後のフォロー体制を整えることで、若手生産者が安心して栽培に取り組めるのではないかと考えています」と話すのは、南陽市宮内でアスパラガス50アールを栽培する紺野幸陽〈こんの・よしたか〉さん(42)。徹底した管理と高い栽培技術で、県農業技術普及課の栽培データ収集に協力し、研修会などで圃場を提供する。若手生産者の育成に積極的に取り組むなど、生産者のリーダー的存在だ。紺野さんが2013年に就農した当時、アスパラガスを生産する若手はほとんどいなかった。栽培を始めても、管理の難しさや収穫の大変さからやめてしまう人が少なくないという。そこで紺野さんは、県に新規栽培者の定期的な研修会の開催や技術面のフォローを呼びかけ、生産者側としての指導や聞き役となるなど、若手生産者を支えている。アスパラガスは、苗を定植して1、2年目は株を成長させ、本格的な収穫は3年目からで、10年から15年ほど同じ株から収穫ができる。しかし、高品質で安定した収量を長期に確保するには、防除のタイミングや翌年の収穫に向けた株の養生など、日頃の適正な管理の積み重ねが重要となる。春取り後、約1カ月間の立茎作業では、夏取りや来年の収穫に向け、株に十分な栄養を蓄える最も大切な時期だ。「その都度の適正な管理を知ることと、病虫害などは早期に対処し、ロスを出さないことが重要」と紺野さん。県や関係機関、生産者のバックアップで、市場での個々の品質等級は向上しているという。同市赤湯の吉田太一さん(39)は、紺野さんの下で栽培技術のノウハウを学び、18年に独立就農した。「身近にすぐ相談できる存在がいることは、生産者にとって安心感がある」。栽培が軌道に乗ったので、新たに20アールを作付けし、45アールでの営農を予定している。2人は「機械に頼ることができない収穫作業は大変の一言」と話す。ピーク期の収穫量は約65アールで1日当たり200キロを超えるため、春取りの収穫は3年前から共同で作業する。共同作業は時間の短縮になるほか、病虫害や圃場の変化に気づきやすく、情報の共有になるという。「何よりも仲間の存在で楽しく農業ができ、技術を高め合える」と紺野さん。「将来は2人での法人化を視野に規模拡大していき、産地として品質を高め、ブランド化を図っていきたい」と意欲を見せる。

〈写真:「いつもこんな感じで楽しくやってます」と収穫後に談笑する紺野さん(左)と吉田さん〉