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水稲「次世代シリーズ」を育種 高温・病気に強く高収量【6月3週号 埼玉県】

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 【埼玉支局】「近年の異常な猛暑でも確実な収入へつなげるため、高温や病気に強く、高収量で食味が良い理想の稲をつくりたいと思い、独学で育種を始めました」と話すのは行田市犬塚の赤羽修一さん(65)。水稲18ヘクタール、麦35ヘクタールを作付けるほか、品種登録した水稲「次世代シリーズ」の育種と種子の販売に取り組む。次世代シリーズは、現在3品種を登録。シリーズの先駆け「次世代の夢」は、埼玉県の品種「彩のきらびやか」を親に、突然変異種を選抜育成したもの。紋枯病、いもち病に強く、縞〈しま〉葉枯病に抵抗性を持つ。稈長は低く、茎が太くて強い。赤羽さんは「道路標識が倒れるほどの暴風雨でも倒伏しませんでした。台風を気にせず栽培することができます」と説明する。「次世代のまなざし」と「次世代の七光〈ななひかり〉」は、次世代の夢の突然変異種から育種。次世代の夢の特性を引き継ぎ、それぞれに新たな利点も付加している。次世代のまなざしは3~5センチほどの長い芒〈のぎ〉が特徴。この芒を害獣が嫌う傾向があり、スズメやイノシシ、シカなどからの食害に遭いにくい。鳥獣害の多い中山間地での栽培に勧められるという。次世代の七光は米粒の大きさと良食味が特徴。千粒重は34グラムと「コシヒカリ」よりも15グラムほど重い。もちもちとした独特の粘りがある。弁当店からは「米を次世代の七光に換えてから残飯が大幅に減った。この米はどこで買えるのかという問い合わせも受けている」と評価が高い。次世代シリーズは元肥と追肥ともに多肥で栽培することで、猛暑に負けない多収量の稲ができる。通常の水稲栽培では、徒長による倒伏につながる施肥量のため、栽培農家の中には抵抗感がある人もいたという。赤羽さんは種もみの購入者に栽培マニュアルを配布し、適正な収量を得られるようサポートしている。埼玉県では2010年、平均気温が熊谷気象台の観測史上1位となる猛暑に見舞われた。高温障害による白未熟粒が多発するなど県全域で深刻な被害になったが、赤羽さんが作付けした次世代の夢は、例年より減収したものの10アール当たり収量650キロを確保した。「品種登録のための育種は、数年をかけて200項目以上のデータを採取します。種もみの採種はほかの品種と混ざらないよう慎重に栽培しなければならないなど苦労は絶えません。その分、理想の米が収穫できたり、栽培農家や種苗店から好評の声が届いたときのうれしさは格別です」と赤羽さん。「新たな次世代シリーズの品種登録に向けて、試験栽培を重ねています。シリーズ最多収量を目指します」と意欲的に話す。

〈写真:次世代の夢の播種作業に汗を流す赤羽さんと妻の典子さん(63)〉