ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

英語講師との二刀流 若者に農業の魅力伝えたい【4月4週号 広島県】

230427_7.jpg

 【広島支局】自給自足の生活に憧れ、尾道市向島町で「PITCHFORK FARMS(ピッチフォークファームズ)」を営むトーマス・コレップファーさん(35)。2011年に米国から来日し、農薬や化学肥料を使用しない自然栽培で、年間約80種類の野菜やかんきつを育てている。露地とハウス2棟でベビーリーフやスイスチャードなど葉物野菜を中心に、季節の野菜を少量多品目で栽培。農園内では、飼育する羊や鶏が自由に草を食べ、自由に生活する。「動物が雑草を食べてふんをし、それが肥料になって良い循環が生まれる」。トーマスさん夫妻が食べる以上にたくさん収穫できた野菜は、「御野菜セット」として数種類を箱詰めし、契約する人たちへ定期販売している。現在は、尾道市立大学で英語の講師を務めながら、農作業に従事。トーマスさんの農業に興味を持ったボランティアの人たちの手を借りながら収穫作業などに取り組む。作業を手伝う同大学の安田直斗さん(19)は「将来は農業をしたいので、農業のことをいろいろ知っているトーマスさんから、たくさん勉強したい」と話す。トーマスさんは16年から2年間、広島大学大学院で生物多様性と農業を学んだ。授業の一環で訪れたネパールでは現地を調査し、農業の研究に熱心に取り組んできた。来日する前から自給自足に興味はあったが、米国では農業の規模が大きく土地の値段が高いため、ハードルが高いと感じていたという。来日後、尾道市に移住したことがきっかけで、耕作放棄地だった土地を買い、本格的に農業を始めた。「日本の四季を感じながらの農業が楽しいし、自分のやり方で栽培できることがうれしい。日本は土地が安く、就農者への支援があるので、農業を始めやすい環境だ」とトーマスさん。一方、農家の高齢化は日米共通の課題だという。「大学の学生たちのような若い世代に、農業の魅力を伝えていきたい」と話している。

〈写真:「1~2年後には、ここで取れた野菜を使って農家カフェやレストランを開きたい」とトーマスさん〉