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温泉熱活用+ICT管理 暖房不要のイチゴ栽培【4月1週号 鳥取県】

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 【鳥取支局】包装資材メーカーの株式会社メイワパックスは、2020年に株式会社メイワファームHYBRIDを設立。温泉熱の活用をはじめ、ハウス内の環境を自動制御するICT(情報通信技術)を導入したイチゴ栽培に取り組む。メイワパックスは鳥取市の企業誘致で県内に進出。温泉を活用した事業を鳥取市から提案され、温泉地の同市鹿野町で、2018年に品種登録されたイチゴ「とっておき」の栽培を始めた。メイワファームはハウス3棟(1棟756平方メートル)で、社員2人、従業員11人体制でイチゴを栽培。株元の温湯管に鹿野温泉の温泉水を通し、培地を温めている。培地が温まると、ハウス内温度が高まるとともに、イチゴの成長が促進されるという。ハウス内の温度を維持できるため、冬場にボイラーを使う必要がなくなり、その結果、二酸化炭素を排出しない環境に配慮した農業ができるようになった。イチゴ栽培は一からの挑戦だったため、地元の農家が協力。当初は実の出来過ぎで栄養が行き渡らなかったため生育不良になった。農家と相談し、肥料などの試行を重ねた結果、特殊な農法を確立し、実の硬さや甘みをコントロールすることを可能にした。販売当初はパック売りだけで認知度は低かったが、地元の和菓子店から「イチゴ大福用のイチゴを仕入れたい」と相談があり、大粒のイチゴを卸した。大粒のイチゴ大福が話題になり、SNS(交流サイト)を中心に、メディアでも取り上げられている。認知度が上がったことで、地元の店舗から仕入れ先として選ばれるようになった。さらに、道の駅や鳥取県内のスーパーなどで販売する加工品「温泉いちごミルクのもと」に人気が集まっているという。同社CTO(最高技術責任者)の米澤隆嗣〈よねざわ・りゅうじ〉さん(49)は「地域や企業と連携してイチゴの一大生産地になれればと思います。多種多様な企業を誘致し、より大きな観光地にしていきたい」と話す。

〈写真:温泉とイチゴをイメージしたイラストを描いたメイワファームの事務所〉