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高麗人参スプラウト 新たな経営の柱に【3月4週号 香川県】

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 【香川支局】高麗人参〈こうらいにんじん〉の生食用スプラウトの水耕栽培に取り組む三豊市高瀬町の農事組合法人高瀬茶業組合。香川英則組合長(68)は「茶の産地を守るためにも新たな経営の柱としていきたい」と話す。茶の生産量と収益が下がる中、荒茶加工場の製造ラインの一部を改修し、一度に2千本植えられる日本最大規模の施設で全国一の量産をねらう。茶業組合がある同町二ノ宮地区は、県内を代表する茶の産地。近年は、生産者の高齢化や後継者不足に加え、茶の消費はペットボトルが主流となり、茶葉の販売量は減少傾向になっている。健康志向が高まる中、伝統ある茶の生産を残しつつ、新たな事業として高麗人参の栽培を2022年に開始した。太陽光の波長に設定したLED(発光ダイオード)ライトを据え、ミスト式水耕栽培プラントを20基新設した。原産地の韓国から輸入した苗を、プラントに定植し、出荷までの1カ月で全長25㌢に成長させる。栽培では、温度と湿度を一定に保つことが重要。天候や時間帯によって大きく変動するため、管理が難しく、細かくデータを記録することで対策につなげる。結露を防ぐため、新たにファンを取り付ける予定だ。一般的には根の部分を生薬に用い、収穫まで6年ほどかかる。栽培の難度が高く、適した培土を用意し温度管理や病害虫対策など、長期間にわたり細心の注意が必要だ。スプラウトで出荷することで、栽培期間を短縮できるほか、生育の違いが出にくく安定生産できるメリットがある。根だけではなくすべてを食べられ、栄養を余すことなく摂取できるという。三豊市農林水産課の大矢哲也課長は「農業情勢は厳しいですが、高麗人参が新たな特産品となり、地域活性化につながってほしい」と期待する。敷地内の直売所では商品を丁寧に説明。ホームページとは別に高麗人参の専用サイトを開設し、問い合わせを受け付ける。栽培担当の荒木直樹製造部長は「高麗人参の食べ方をまだ知らない人が多い。販路開拓のため宣伝活動にも力を入れたい」と話す。認知度を上げようと、薬膳教室を開催するほか、市内の事業者と協力し加工品に取り組む計画もあるという。

〈写真:栽培プラントで生育状況を確認する香川組合長(左)と荒木部長〉