【岡山支局】「『安心を買う』という言葉の通り、万が一のことがあった際に補償があるのとないのとでは、これからの安心感が違う」と話すのは、真庭市蒜山の入澤廣成〈いりざわ・ひろよし〉さん(70)。夫婦二人三脚でキャベツ220アール、水稲80アールを栽培する。経営安定と新たな取り組みの後ろ盾として収入保険に加入した。2003年にキャベツ栽培を始めた入澤さん。同じ志を持つ仲間と出荷組合を設立し、鳥取県や島根県など、山陰地方を中心に販路を確保していった。「品質の高いキャベツを栽培したい」という思いから、たどり着いた品種が「初恋」。甘味が強く玉ぞろいの良さが特徴で、蒜山の厳しい雪の中で越冬できる強さがある。「特注の移植機を使って1畝に2列の苗を植え付け、夏どりと冬どりを組み合わせることで、効率的な栽培ができるように努めている」。22年にはスガノ農機株式会社の「部分深耕プラソイラ」を購入し、耕地の排水性を高めることに力を注いだ。根こぶ病などの土壌伝染病の予防に取り組みながら、収穫物の品質向上に努めている。質の高い農業を求め、08年に取り組み始めたのが青色申告だ。「税理士に任せるだけではなく、エクセルファイルなどで日々の収支を管理し、より詳細に『見える化』をすることが経営安定につながる」。22年はキャベツの販売価格が大幅に下落し、収入が大きく減少した。自助努力ではどうすることもできないもどかしさを抱え、解決策を講じていたときに知ったのが収入保険制度。農業共済制度は認知していたが、野菜に対して補償があることを初めて知り、興味を持った。「保険の対象にならないほど豊作になることが農家にとっては一番だが、『守られている』ということに意味がある」。保険料は決して安くはないが、「安心を買う」ため加入へと踏み切った。「収入保険に加入することが、新しいチャレンジをする、その足がかりになる」と入澤さん。「品質の高いキャベツを消費者に提供し続ける」と、将来を見据えた農業に意気込む。
〈写真:「高い品質を維持するためには農機具の日々のメンテナンスが欠かせない」と入澤さん〉