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地元のワイナリーと提携 ブドウ搾りかすを給餌【3月1週号 広島県】

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 【広島支局】三次市布野町の株式会社のば牧場は、地元のワイナリーでワインの製造過程で出るブドウの搾りかすを給餌した「三次ワインビーフ」を肥育する。昨年10月には「みーとのば・精肉店」(同市東酒屋町)を開店し、三次のブランド牛・ワインビーフの普及拡大を狙う。同社の野畑篤史代表取締役社長(39)は「自分が育てた牛がどこで売られているのか分からなかった。牛への思いをお客さんに直接伝えたい」と、直売店を開店した。店で1頭買いするため、サーロインやフィレのほか希少部位などさまざまな精肉を販売。写真共有サイト(インスタグラム)に「今日のおすすめの商品」を投稿し、PRしている。定期的に訪れるリピーターが多いという。「『おいしかったよ』と何度も買いに来てくれる人がいて、ありがたいなと思う。もっとおいしい肉を作ろうという気持ちになる」と野畑社長。祖父母が牛を飼い、父が獣医師だったこともあり、畜産は身近だったという野畑社長は、2010年に畜産経営を始めた。現在、肥育牛170頭、繁殖牛100頭を飼養。同市には、三次産のブドウでワインを造る「株式会社広島三次ワイナリー」があることから、地域の特長を生かそうと、父の提案で14年からワインビーフを肥育する。草やふすま、乳酸菌などとブドウの搾りかすを混ぜてアルコール発酵させた飼料を、出荷前15カ月、肥育牛に与えるという。「1日にあげる量は餌全体の5%だが、匂いが良いのか食いつきは良い」。同牧場は繁殖にも取り組み、9割が自家産だ。牛が病気にならないよう注意しながら、早めに対処することで事故はほとんどなく、肥育結果は良いという。「肥育する期間を32カ月まで延ばして、よりおいしさを求めていきたい」。広島三次ワイナリーの太田直幸取締役ワイナリー長兼醸造長は「野畑さんの熱意と、本来は破棄する搾りかすを再利用する取り組みに共感し、できる限り協力したいと感じた。三次の新たな特産品として定着してほしい」と期待する。

〈写真:「販売する中で感じた思いを生かせるのは生産者じゃないとできないこと。それを生かしてさらにおいしい肉を作りたい」と野畑社長〉