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震災・台風を乗り越え水田農業を担う【2月4週号 岩手県】

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 【岩手支局】宮古市赤前の「宮古東部ファーム(佐々木積〈つもる〉組合長=73歳、組合員17人)」(以下、東部ファーム)は、東日本大震災後に整備された復旧田を耕作する機械利用組合として2015年に設立。19年の台風災害などを経験しながらも、地域農業の担い手として奮闘している。赤前地区は大震災の津波で、休耕田を含む約9ヘクタールの農地が被災したほか、各農家が所有していた農業機械の多くが流された。東部ファームは、国の被災地域農業復興総合支援事業を利用して導入したトラクターなどの農業機械の管理と、水稲栽培の作業受託による地域農業の復興を目的に組織された。15年に国の農用地災害復旧関連区画整理事業が始まり、17年5月には圃場整備が完了した2ヘクタールで先行して作付けした。東部ファーム設立時から機械オペレーターを担う伊藤壽雄〈としお〉さん(71)は「整備後初めての作付けは、稲がしっかりと育つか心配だった。生育にむらがあったが、予想を上回る収穫量を確保できた」と振り返る。大震災以前、同地区では10アール以下の圃場が多くを占めていたが、区画整理で30アールの圃場が中心となった。圃場への乗り入れ回数が減り、作業工程の削減につながっているという。地域農業の再生が順調に進んでいたさなか、19年10月の台風19号で同地区は再び大きな被害を受けた。伊藤さんは「保管していた約800キロのもみ55袋のうち27袋が水没し、乾燥機2台も水没して動かなくなった」と振り返る。米価の下落や肥料高騰など、農業を取り巻く状況は厳しいが、導入した農業機械と整備された圃場の存在が、営農への意欲を長続きさせているという。23年産水稲は、岩手県オリジナル品種「銀河のしずく」を中心に、7.4ヘクタールで作付けるという。「機械と圃場の条件はそろっているので、意欲のある後継者が出てきてほしい」と伊藤さん。宮古農業改良普及センターでは「東部ファームは地域の水田農業をけん引している中核的な組織。被災の困難を乗り越えた経験を生かし、さらに発展してほしい」と期待を寄せる。

〈写真:春の作業に向けてトラクターを整備する伊藤さん〉