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防風林「継承していきたい季節の行事【2023年2月4週号】」

 ▼修理に出していたひな人形が奇麗になって帰ってきた。業者に送ったのは昨年の夏ごろで、桃の節句に間に合うだろうかと気をもんだ。木目込みの内裏びなは、娘の初節句の際に姿や表情が気に入ってそれなりに奮発した。目立っていた男びなの顔のシミも消えて若々しい。
 ▼ひな祭りの起源は、千年以上さかのぼる平安時代の中期ごろとされる。3月初めに自分の災厄を人形に託して流した「上巳(じょうし)の祓(はら)い」や少女のままごと「ひいな遊び」などが合わさって形成されてきたという。祓いの要素が消えて女性のお祭りへと変化したのは、戦国の世が終わり平和になった江戸時代初期とされている。今年の大河ドラマでは、徳川家康が若い頃に人形遊びに熱中する演出があった。不自由な人質生活で、そんな息抜きを楽しんだのかもしれない。
 ▼頻繁に買う物ではないが、買い物に出かけてひな人形の展示があると知ると、顔や衣装を見ようと足を運んだ。同じ作家でも作品ごとに表情が違っていて素人なりに楽める。少子化の影響もあるのか、昨今は随分と売り場が縮小してしまい寂しい限りだ。
 ▼江戸時代には、人形が華美になり過ぎだと幕府がお触れを出したり、明治維新後は新政府が節句行事の廃止を打ち出したりと受難もあったよう。最近は、女の子らしさ、男の子らしさを求めないという考えも広がっている。単純に子どもの健康を願う日にするなど工夫し、伝統的な行事や工芸品などが失われないようにしたい。