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経営継承を後押し 収入保険の安心感【2月3週号 岡山県】

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 【岡山支局】「まったくの未経験から父の後を突然継ぐことになりましたが、収入保険の存在が就農の後押しになってくれました」と話すのは、倉敷市船穂町でスイートピーを栽培する淺野慎之佑〈あさの・しんのすけ〉さん(29)。急逝した父の経営を引き継ぎ、2022年に就農した。現在は祖父母や従業員、所属するJA晴れの国岡山船穂町花き部会の部会員など、多くの助けを受けながら、ハウス3棟、30アールを栽培。23年1月には「令和4年度岡山県花き共進会」で岡山県花き生産協会会長賞を受賞した。就農以前は不動産業界で働いていた淺野さん。父はスイートピー産地の同町のベテラン農家として信頼を得ていたので、その後を継ぐプレッシャーは大きかったという。就農を後押ししたのは収入保険だ。「栽培の経験はなく、子供が生まれ、家を建てたばかり。右も左も分からない中で、収入保険で少なくとも今年の収入は補償される、失敗しても大丈夫と思える安心感は大きかったです」。就農して一番苦労したのは「先を見越した作業ができないこと」で、初めは目先の作業すら分からなかったという。周囲から教えを受けながら手探りで栽培したが、実際に花が咲くまでは不安の連続だった。「1年でも栽培経験があれば、順序立てて行動ができますが、研修を受ける間もなく就農したので、『学んで即実践する』の繰り返しでしたね」。努力のかいあって無事に花が咲き、出荷にこぎつけた。「栽培を通して感じたのは、植物はうそをつかないということ。手をかけた分だけ成長するのでやりがいがあります」。目下の目標は、栽培技術に習熟するとともに、自分なりのやり方を見つけること。新しい技術の導入にも積極的で、システムエンジニアの経歴を持つ同部会員が開発した温湿度管理システムを試験導入した。同システムはハウス内温湿度をスマートフォンでリアルタイムに確認できる。適切な温度管理で品質の向上が見込めるほか、過去の計測データをグラフで確認し、生育の分析にも活用できるという。淺野さんは「今後はシステムやヒートポンプを活用しながら、より高品質な生産を目指したいです」と意欲を見せる。

〈写真:「便利な物があふれる世の中で、便利ではないけれど人の心に寄り添う花の存在を広めていきたいです」と淺野さん〉