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防風林「国内資源を活用した肥料の利用を広げよう【2023年1月3週号】」

 ▼江戸時代の日本の都市は、諸外国に比べ極めて衛生的だったことで知られている。江戸には亨保6(1721)年ごろ、すでに100万人が暮らしたとされる。し尿や炊事後の灰は周辺の農家に運ばれて肥料にされ、収穫した野菜などは江戸で消費する資源循環ができていた。
 ▼一方、フランス革命(1789年)当時のパリの人口は54万人ほど。しかし、市民はおまるで用を足し、し尿やごみをそのまま道路に捨てるため、街じゅうに汚物が堆積する劣悪な衛生環境だったという。ベルサイユ宮殿もトイレの数が少なく、庭に汚物があふれていたとの話が伝わっている。
 ▼政府は、ウクライナ情勢を受けて価格が高騰し、少数国に多くを依存する問題が指摘された肥料原料について、堆肥や下水汚泥など国内資源の活用を促進する方針だ。2030年までに堆肥と下水汚泥資源の使用量を倍増する目標を設定。堆肥はペレット化による高品質化や広域流通などを促し、下水汚泥はリンの回収や汚泥コンポストの取り組みを支援して利用拡大を図っていく。
 ▼下水汚泥は、現状では大半が焼却されて埋め立てや建設資材に使われ、肥料利用は1割程度にとどまるそうだ。国内資源の有効活用で輸入依存度を低くできるなら取り組み推進に異存はない。ただし、普及に向けて"下水汚泥由来"のイメージや重金属への不安も指摘されている。科学的な根拠を示しつつ、よいイメージを持ってもらえる方策はないだろうか。