ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

耕作放棄地を活用 安全・安心の米増産【12月2週号 山口県】

221208_7.jpg

 【山口支局】「『土地は、先祖から受け継いでいるのではなく、未来から借りているもの』というネイティブアメリカンの言葉を胸に、農業に取り組んでいます。環境を守り、安全・安心な食を提供することで未来につなげていきたい」と話すのは、長門市日置の株式会社維里〈いさと〉代表・首藤元嘉〈すとう・もとよし〉さん(45)。妻の陽子〈ようこ〉さん(39)と、農薬・化学肥料を使用せず、自然に寄り添った栽培方法に取り組み、主に水稲「イセヒカリ」(3ヘクタール)を栽培する。愛媛県で代々続く農家の12代目として農業に取り組んできた元嘉さん。米の追加購入の要望に応えるため、耕作面積を増やしたいと考えていた。「地元での実現が難しく悩んでいたところ、長門市が耕作放棄地を活用したオーガニック農業の推進制度や就農者支援などに積極的に取り組んでいることを知り、移住することを決めました」。自身のやりたい農業の形をかなえるため、農地にとらわれない農業を選択し、2022年4月に同市へ家族で移住した。「移住先の地区は住民の支援が厚く、小さい地域ならではの連帯感があります。その地域の一員として温かく迎え入れられたことに感謝しています」。新たな土地での1年目、長年遊休農地となっていた田んぼ、愛媛とは違う気候下での栽培を経験した。今後に向け、土壌改良に力を注ぐほか、同市で新たに有機JAS認証を取得するための準備を進めている。。「将来は水稲の作付面積を11ヘクタールに増やし、大切につないできたイセヒカリの種子から育てた米を多くの方に届けたいです」。イセヒカリのブランド化を目標に、現在は飯米・加工品の米粉やシリアルを販売し、今後は酒や化粧品の商品化を考えている。元嘉さんは「農業の未来を明るくして、これから就農する人を後押しできる見本になりたいです。会社・行政・地域など組織の力で農業に取り組み、地域を守り、『オーガニックが当たり前の未来』をつくっていきたい」と力強く話す。

〈写真:「この土地とともに歩んでいきたい」と話す首藤さん夫妻〉