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耕作放棄地が「ぎんなんの郷」に【11月4週号 石川県】

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 【石川支局】加賀市高塚町の高塚地区営農組合は、耕作放棄地を活用した大規模なギンナン栽培に取り組んでいる。収穫したギンナンは近隣のスーパーや直売所で「大粒で食べ応えがある」と消費者に好評だ。同地区では茶栽培や養蚕が盛んだったが、高齢化が進み、耕作放棄地が増加した。長年守ってきた農地を生かすため、2000年に始まった県営補助整備事業で大規模集積された畑地を活用することを協議。地権者の同意の下、5.3ヘクタールに約600本のイチョウを植え、「加賀ぎんなんの郷」と名付けた。植栽は02年に開始。3年がかりで植え、出荷に十分な量の実をつけるまで15年ほどかかったという。同組合の組合長・北野長俊さん(73)は「構成員は高齢者が多いため、維持管理になるべく労力のかからないものを選んだ」と話す。イチョウは天候の変化や風雨に強く育てやすい。紅葉の時期には町民の目を楽しませ、ギンナンにはベータカロテンやビタミンCなど体の免疫力を高める栄養素が多く含まれている。同組合では20年に銀杏事業部会を発足し、ギンナン事業に本格的に乗り出した。収穫は10月下旬に開始。町民も参加するギンナン拾いは恒例行事となり、地域交流の場としての役割もあるという。表年と裏年で収穫量に波があり、表年は約8トン、裏年は半量の4トン。収穫後は洗浄し、機械で皮をむいた後、ハウスで天日干しにして出荷する。同組合事務局の森田利与一さんは「手作業が多く大変だが、ギンナンを心待ちにしている人もいる。『おいしい』という言葉を聞くと頑張れる」と笑顔だ。北野さんは「農業の担い手が少なくなる中で、農地を守る方法を模索してきた。臭いの問題があるため、広い面積があるからこそできることだと思う。ギンナン拾いは地域活性化にも寄与できたと感じている」と力強く話す。

〈写真:ギンナンが実ったイチョウの木と北野さん(右)、森田さん〉