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土壌診断・水稲直播・可変施肥 ドローンで省力化推進【11月3週号 福井県】

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 【福井支局】「大きな機械での作業が困難な中山間地域だからこそ、スマート農業の普及が必須」と話すのは、あわら市熊坂で水稲や野菜など31ヘクタールを耕作する伊与衛門〈いよえもん〉農園の代表・竜田誠〈たつた・まこと〉さん(50)。今年からドローン(小型無人機)を活用して、土壌診断や水稲の直播栽培、可変施肥を組み合わせた実証を始め、省力化を目指している。スマート農業を導入するきっかけは、他県のドローンを活用した農作業の省力化に関する記事。竜田さんは、自分たちの中山間地域でも同様の取り組みができないかと考えた。2021年、ドローン関連事業を手掛ける加賀市の「創造社」と、約半年をかけて土壌測定用ドローンを共同開発した。土壌診断は、通常は測定点まで人が移動するが、開発したドローンは、水がある測定点に着水し、遠隔操作で測定器のセンサー棒を土中に刺す。フレームに浮きが付いているので、測定器本体がぬれることはない。22年5月には飼料用米の圃場48アールで、ドローンによる直播の実証を開始。7月には空撮で生育を調査し、生育状況に合わせて追肥量を調整する可変施肥の作業に取り組んだ。土壌分析による可変施肥で、従来の施肥量が3割程度軽減された上に、10アール当たり537キロを収穫。従来の栽培方法と変わらない量を確保できた。ドローンで作業効率と省力化が図れたことが実証された。「初めての作業ばかりだったが、作業時間が短縮できたので、かなりの省力化につながった」と竜田さん。「中山間地域では、高齢化に伴い耕地を手放す人が増えている。耕作放棄地を増やさないように、ドローンなどのスマート農業を駆使して作業効率化を図っていきたい」と話す。

〈写真:共同開発したドローン。県内に設置されたRTK固定基地局(高精度の位置情報配信システム)の利用で、より正確な航行が可能となった(写真提供=竜田さん)〉